泥臭く戦う秀才たち。リアル進学校・浦和高校ラグビー部が花園で勝つ (2ページ目)

  • 門脇 正法●取材・文  text by Kadowaki Masanori
  • photo by Sportiva


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 ノーサイドの笛が第1グラウンドに鳴り響くと、スタンドの一角を埋め尽くした浦高の大応援団は歓喜の渦に包まれた。

 浦和高校は、東大合格者数でみると全国の公立高校では第2位(2019年は41名)という超進学校だ。生徒たちは全員がハイレベルの難関入試を突破して入学しており、当然ながらスポーツ推薦などの優遇制度はない。それだけに、ラグビー部の花園での1勝には大きな価値がある。

花園に詰めかけた浦高の大応援団。各界で多くのOBが活躍している花園に詰めかけた浦高の大応援団。各界で多くのOBが活躍している
 思えば、この初勝利までは、3度の出場を経なければならなかった。

 1度目の出場は第39回大会(西宮球技場で開催)。

 当時は埼玉県予選で優勝しても、それがイコール全校大会出場とはならなかった時代。浦高は埼玉県代表として北関東地区予選に出場し、決勝で新潟商業を破ってようやく全国大会にコマを進めた。しかしながら、1960年の元旦に行なわれた1回戦で、浦高はこの大会でベスト4に入った大阪代表の四條畷高校に3対11で敗れてしまう。

 2度目は2013年の第93回大会。

 埼玉県予選の決勝で頸椎を損傷する大ケガを負ってしまったチームメイトのために、花園での初勝利を持ち帰ろうと臨んだ1回戦。だが、ラグビーに力を入れ、全国大会の常連校の仲間入りを果たそうとしていた滋賀県の光泉高校に跳ね返され、12対22のスコアでまたもや初勝利を逃してしまった。

 そして、3度目となる第99回大会。浦高に3度目の正直がもたらされた。

 それは浦高が初めて全国大会を決めた昭和、2度目の平成、今回の令和という3つの時代をまたいだ、花園での初勝利だったのである。

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「浦高はフォワードで点を取りにいかないと始まらないですから。それと、今回はボールに向かっていくのではなく、自分たちの穴を埋めて戦うことも意識しました」

「勝った瞬間は、とてもうれしい気持ちでいっぱいになりました。今までのラグビー部OBのみなさんたちが積み重ねた上に、新たな1ページを開くことができました」

 今回の花園での初勝利について、そう語ってくれた松永キャプテン。しかし、キャプテンとして、勝利の余韻だけに浸ってばかりはいられない。

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