帝京大、あっけない黄金時代の終焉。監督&選手も認めた「甘さ」とは (2ページ目)

  • 斉藤健仁●取材・文・撮影 text & photo by Saito Kenji

「負けたら終わり......」

 そのプレッシャーは、どちらの選手にとっても重くのしかかる。そんななか、流通経済大の主将No.8(ナンバーエイト)積賢佑(せき・けんすけ/4年)は冷静だった。

「相手が疲れているのがわかった。試合前の分析で、帝京大のディフェンスが内に寄る傾向があったので、外を攻めた」

 帝京大は流通経済大の攻撃をディフェンスしきれず、後半29分にフィジー出身のWTB(ウィング)イノケ・ブルア(2年)、後半32分にFB(フルバック)河野竣太(2年)にトライを決められて39-43。土壇場でまさかの逆転を許し、最後は流通経済大FWにボールキープされてノーサイドを迎えた。

 流通経済大に公式戦で負けるのは、帝京大ラグビー部の歴史で初の出来事。帝京大が大学選手権の初戦で敗退したのは、2006年度大会でSH田中史朗(キヤノン)を擁した京都産業大に7-10で敗れて以来、実に13シーズンぶりのことだった。

「実力不足だった。相手選手のいいランを止められなかったことが一番のポイント。積み上げてきたことがまだまだ甘かった」

 試合後、岩出監督は肩を落とした。

 過去10年あまり、帝京大はプレーだけでなく、フィジカル強化や食事・栄養面で土台を築き上げたことにより、大学ラグビー界をリードする存在になっていた。しかし、ライバル校もフィジカルトレーニングに精を出すようになり、2年ほど前から帝京大が絶対的な強さを誇る試合は少なくなってきた。

「フィジカルは強かったですが、ほかの怖さはあまり感じなかった」

 対抗戦で帝京大に40-17と快勝した明治大のLO(ロック)箸本龍雅(3年)はこう語っている。

 また、帝京大はリクルート面でも苦戦した。今年の4年生で高校日本代表に選ばれていた選手は、ケガで流通経済大戦に出場できなかった主将CTB/FL(フランカー)本郷泰司ら2名だけ。FWでの高校日本代表選手はゼロだ。さらに、昨年度のFWは4年生が中心で、今年のFW陣は経験値が高くない。その結果、ケガ人も増えてメンバーを固定することができない悪循環に陥ってしまった。

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