慶應義塾大に何が起きた。
22年ぶりに大学ラグビー選手権出場を逃す

  • 斉藤健仁●取材・文・撮影 text & photo by Saito Kenji



「新しいことをする、伝統を変えるのは、日本で初めてラグビーを始めた慶應」

 そう信念を持つ栗原HCは、創部120周年にして初めて外国人選手を受け入れることを決めた。それが、春に入試を受けて9月に入部したニュージーランド出身のNo.8(ナンバーエイト)アイザイア・マプスア(1年)とCTBイサコ・エノサ(1年)のふたりだ。

 栗原HCはスターもエースもいなくなったチームの新しいスローガンに、「UNITY(一体感)」を掲げた。チームが一体となり、まとまりで勝負するという意志の顕れだ。

 栗原HCはリーダー陣と話す時間を多く持ち、100人を超える部員全員と1対1の面談を何度も行なった。栗原HCは「彼ら学生と話すと(精神的に)社会人寄りだった」と感じ、多くの部分を学生たちに任せたという。

 しかし、多くの選手が「日本一」という目標を口にしながら努力する姿は認めつつも、栗原HCの目にはまだまだ物足りなく映っていた。春季大会では大東文化大戦(43−12)しか勝てずに1勝4敗。春の早慶戦(12−36)でも慶明戦(14−27)でも、結果を残すことができなかった。

 夏合宿では明治大(49−17)に勝利し、調子が上がってきたかに思われた。だが、対抗戦が開幕すると、筑波大にはロスタイムにトライを許して黒星を喫し、日本体育大にも最後のワンプレーで逆転された。そして前戦の明治大には大敗(3−40)し、早稲田大からも白星を得ることができなかった。

「自分たちの力は出し切ったが、(早稲田大と比べて)メンタルが大きく違っていた。(先発7人が1年生と2年生という)若いチームをリーダー陣がマネジメントできなくて申し訳ないと思っています」

 試合後、栗原キャプテンが反省を口にすると、栗原HCはそれをフォローした。

「選手たちは学生ですので、もっとこちらが主導権をもってリードしてあげればよかった。僕の見極めミスなので、今の4年生にはいい思いをさせてあげられなくて後悔しています」

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