早大が劇的トライで帝京大撃破。殊勲の斎藤主将「次のW杯は出たい」 (2ページ目)

  • 松瀬 学●文 text Matsuse Manabu
  • 齋藤龍太郎●写真 photo by Saito Ryutaro

 ラック。斎藤が素早く右オープンのFB(フルバック)河瀬諒介につなぎ、内側のNo.8(ナンバーエイト)丸尾崇真に渡し、またラック。右サイドの甘いディフェンスを逃さず、斎藤がインゴールにダイブした。「チームの思いが彼(斎藤)に乗った」(相良南海夫監督)トライだった。
 
 斎藤が思い出す。

「岸岡に(パスを)呼ばれていて、獲り切れると思ったんですけど、なぜか小林(賢太)君にボールが渡ってしまって...。でも、流れ的にもいけると思って。最後は前が空いていたので、自分で飛び込みました」

 早大は昨季、大学選手権準決勝で明大に競り負けた。ここ一番でトライを獲り切ることができなかった。今季のチームもディフェンスからチーム作りがなされたが、タレントが並ぶバックスの攻撃力は大学随一だろう。練習では「仕留める」ことを意識してきた。

 この試合、ラスト10分、帝京大にトライを奪われ、8点をリードされた。インゴールでの円陣で、斎藤主将はこう、チームに声をかけた。「攻め急ぐ必要はない。一歩一歩、まずは1本(トライを)獲って、ラストチャンスにかけよう」と。

 ラスト5分、早大はラインアウトからモールを押し込んで、1トライを返した。左隅からのゴールキックは外れ、3点差のままとなった。これで逆転勝利のためにはもう、トライを奪うしかないと意思統一できた。

 攻めにリズムが生まれ、最後の最後に執念の逆転トライ。2010年以降、対抗戦、大学選手権などの公式戦で敗れてきた帝京大についに雪辱した。

 斎藤主将は向上心のかたまりだ。素材も文句なしで、1年生からレギュラーのアカクロジャージを着てきた。昨年は日本代表候補にも学生で唯一、名前を連ねた。今年2月に始動したワールドカップトレーニングスコッドキャンプのメンバーからは漏れたが、その練習にひとり、見学にきてもいた。

 出身の神奈川・桐蔭学園高校の先輩で、RWCで大活躍したWTB松島幸太朗が先日、斎藤をこう、評していた。

 「すごくハングリー精神がありますよね。ハーフ(SH)もすごくいい選手が増えているので、(日本代表の)レギュラー争いがオモシロくなるんじゃないかと思います」

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