オールブラックスが有終の美。ラグビー王国の誇りと情熱をみせた (3ページ目)

  • 松瀬 学●文 text Matsuse Manabu
  • 齋藤龍太郎●写真 photo by Saito Ryutaro

 この日は多くの人々の記憶に刻みつけられる「メモリアル・デー」となるだろう。ハンセンHCほか、リード主将、ベン・スミス、FL(フランカー)マット・トッド、CTB(センター)ライアン・クロッティ、CTBソニービル・ウィリアムズの代表引退試合となった可能性が高いからだ。

 リードはトヨタ自動車でプレーする予定になっている(クロッティはクボタ、トッドが東芝)。34歳の闘将にとって、初めての日本開催のW杯は感慨深いものとなったようだ。つぶれた両耳。鼻筋の赤い血のかたまりが痛々しい。「特別な記憶は?」と聞けば、しみじみと漏らした。

「素晴らしい2カ月間だった。来日した日から、日本の人々は我々を温かく迎えてくれた。日本ではたしか、(NZの)ジャージが2回も売り切れたと聞いた。日本代表も活躍した。私は日本にまた、戻ってくることを楽しみにしている」

 記者会見。トヨタ自動車の指導陣に入る見通しのハンセンHCは今後のことを聞かれると、「ビールを飲みながら、プレッシャーを感じずに、オールブラックスの試合を楽しむことになる」と言って、笑いを誘った。

「オールブラックスの歴史は決して、ひとりだけで成し遂げられたことではない。多くの人の努力と鍛錬によるものだ。スタッフや選手は変わろうと、またチャレンジを続けて、チームとして成長していくと思う」

 やはりオールブラックスはオールブラックスだ。日本、いや世界の人々に愛されるNZは3連覇を逃しながらも、強烈な印象を人々に残した。世代交代をしながらも、さらに輝きを増していくのだろう。

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