命日に日本は南アフリカとの大一番。平尾誠二にその光景を見せたかった (3ページ目)

  • 宮崎俊哉●取材・文 text by Miyazaki Toshiya
  • photo by AFLO

 日本ラグビーの発展のために、選手として、指導者として、さらに上の立場からも力を尽くしてきた"ミスター・ラグビー"の説明は、シンプルだが、ドンピシャで的を射ていた。

 初めての単独インタビュー取材だったが、平尾は時間の許すかぎり、いろいろな話をしてくれた。同学年とはいえ、まだまだ駆け出しのライターの私に。そのなかで、今も鮮明に覚えている話がふたつある。

 ひとつは、子どもたちへのメッセージをお願いしたときのこと。

「ラグビーに限らず、どんなスポーツでも、『道具を大事にしろ!』と言いたいですね」

 平尾は超基本的な、ちょっとドロ臭いことを言い出した。今ではラバーボールが当たり前となったが、昔のボールは革張り。平尾にも、ボール磨きをさせられたつらい思い出があったのだろう。革のボールは練習後、それこそツバが出なくなるまで出し続けて磨かなければならなかった。

「ラグビーならボール。ラバーになった今は水で洗えば綺麗になりますけど、スパイクは今も昔も一緒。試合前に両チームが並ぶやないですか。そんとき、相手チームのスパイクを見るんです。汚かったから、もう勝ったようなもんですわ。『こんないい加減なチームに負けるわけない』と、自信を持って戦えますもん。逆に、ピカピカだったら要注意。まずはそこからです」

 私はこの話を、少年野球を始めた息子に聞かせた。平尾誠二の偉大さとともに。

 そしてもうひとつは、平尾自身のラグビー観に関わる話だ。

「大学を卒業して、イギリスに留学して、リッチモンドというところでラグビーをやっていたときのこと。練習に参加するようになって、少し経ったときに試合があったんです。前日のメンバー発表。それが衝撃的というか、斬新だったというか......。

 まず、『ラグビーがうまい15人』を選ぶんです。僕も入りました。かろうじて、だろうけど。そしたら、その15人でポジションを組むんです。プロップをふたり選んで、フッカーを選んで......なんていう方法ではなく。専門職なんて関係ない。

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