命日に日本は南アフリカとの大一番。平尾誠二にその光景を見せたかった (2ページ目)

  • 宮崎俊哉●取材・文 text by Miyazaki Toshiya
  • photo by AFLO

 場所は兵庫県神戸市、神戸製鋼本社。社食でランチをいただきながら、私が初めて書いた『ラグビーはこう見るのが楽しい』(ベースボール・マガジン社)の巻頭特集でラグビーの魅力を語ってもらった。『ラグビーマガジン』からの依頼とはいえ、あのタイミングでよくぞ引き受けてくれたと、今も感謝している。

「メンバー入りできるかどうか、ハラハラドキドキの選手もいるでしょうが、平尾さんは余裕ですよね。選ばれないわけがない」

「いやいや、宿澤(広朗/日本代表監督)さんやから、何を考えているかわかりませんよ。安心なんかしてられへん」

 そんな挨拶代わりのやりとりの後、平尾は真摯に、ラグビーを始めたばかりの子ども、応援する親御さんに語り掛けるように、やさしく、わかりやすくラグビーの魅力を説いてくれた。京都生まれの関西弁で。

「ラグビーは、格闘技と球技の境目にあるスポーツ。一応、球技というところに位置づけられていますが、ボールの争奪戦、タックルとかブチかましとか、格闘技の要素がいっぱい。そんなところに魅力があるんでしょうね。

 それと、ボールを持って好きなところへ好きなだけ走れる。なんの制限もなしに。サッカーだったら手を使ってはいけないとか、バスケットだったら歩数とか決まりがありますけど、ラグビーにはコレしちゃいけない、アレはダメってことがありません。

 ラグビーは人間の願望が満たされるスポーツ。それこそが究極の魅力じゃないですかね。パスやキックもあるけど、ラグビーはボールを持って走る、ということを抜きには語れない。ほかのスポーツにはない喜びを、やる人も観る人も存分に味わってもらえればいい。

 そう考えると、やっぱり日本人に合っているんでしょう。日本人が好きそうなものがいっぱい詰まっていますから。プロレス的なところもあるし、本質的にみんなが好きな球技でもある。日本人が好きな言葉だと思いますが、『気合』ってのもラグビーはもろに反映するし、おまけに試合では感動するシーンが必ずある」

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