2019.10.06

1億2500万人の応援でチャージ。
日本代表が神がかり的に強い

  • 松瀬 学●文 text Matsuse Manabu
  • photo by Kyodo News

 だが、このスクラムでサモアのSH(スクラムハーフ)がボール投入の際、"ノットストレート"という信じられない反則を犯した。日本ボールのスクラムだ。赤白ジャージの塊がブルージャージの塊を押しに押す。コラプシング(故意に崩す行為)の反則を得た。もういっちょスクラム。また押した。

 後半からHO(フッカー)に入った堀江翔太が、含み笑いで思い出す。

「あの場面でスクラムを押すのはイメージができていた。実はスクラムトライを取りたかったんですけど......」

 またも相手コラプシングながら、そのまま押して、ナンバー8姫野和樹が左にボールを持ち出した。ラック。途中から入ったSH田中史朗が左ラインのWTB松島にロングパスをつなぎ、相手ディフェンスのギャップをついて、松島が左中間に躍り込んだ。4つ目のトライ。電光掲示板の時計の数字は「84:28」だった。

 もう、たまらない。強気の松島は後半、途中から入ったSH田中に「チャンスがあれば、回してくれ」と伝えていた。

「FW(フォワード)がしっかりスクラムでプレッシャーをかけてくれたので、(相手)BK(バックス)もプレッシャーを受けていたのだと思う。外側の(ディフェンスの)選手がかぶってきた。インターセプトを狙っていたのだろう。"チャンス"って、そのまま持ち込んだ」

 価値あるトライは、FWとBK、いや控え選手を含めたチーム全員でつかんだものだった。責任と使命感。地元ファンの大声援を力とし、日本代表は神がかり的な強さを発揮している。

 ふだんはディシプリン(規律)が薄いサモアがこの日は、規律を保ってきた。世界トップクラスの身体能力、フィジカル勝負を挑んできた。音が記者席まで届きそうなハードタックル。ハイパントキックに日本が後手を踏むシーンも多々、あった。

 でも、「サモアのフィジカルに負けない自信はある」と豪語していた地元出身の25歳・姫野がブレイクダウンでからだを張った。全員がこの日のテーマのひとつ、「フィジカル勝負で逃げない」を実践した。SO(スタンドオフ)の田村優は冷静にPG(ペナルティーゴール)を蹴り込んだし、だれもが猛タックルを繰り返した。

 タックル成功率は相手81%に対し、日本は138本中123本を決める89%を記録した。とくに地味ながらも、両LOのいぶし銀のタックル。ヴィンピー・ファンデルヴァルト、ジェームス・ムーアがチーム最多の14本のタックルをそれぞれ決めた。

 日本はしつこいダブルタックルで相手突進を止め、サモア得意のオフロードパス(タックルを受けながらのパス)をほとんどさせなかった。受け身にならず、素早いプレッシャーでミスも誘った。攻撃時はキックでディフェンスラインの裏にボールを落としたり、パントキックを駆使したりするなど、準備したゲームプランを忠実に遂行した。