日本中が「エンジョイ・ラグビー」
おじぎなど文化交流や尊重も始まった

  • 松瀬 学●文 text Matsuse Manabu
  • 齋藤龍太郎●写真 photo by Saito Ryutaro

 試合そのものは、ラグビーの醍醐味が詰まっていた。開始わずか35秒。ウェールズのSO(スタンドオフ)ダン・ビガーが、相手の意表をつくドロップゴールを蹴り込んだ。キャップ(国別対抗戦出場数)をなんと「130」の大台に乗せた34歳の主将、ロックのアラン・ウィン・ジョーンズは振り返った。

「早い段階で機会があれば、得点したかった。できれば、1分、2分で。うまくドロップゴールを決めてくれた。勝利が重要な試合。序盤から、しっかりと得点を重ねていきたかった」

 ウェールズは、オープンへの絶妙なキックパスから187cmのCTB(センター)のハドリー・パークスが好捕してトライを加えた。豪州もオープンへのキックパスでトライを返し、前半終了間際、ウェールズのSH(スクラムハーフ)ガレス・デービスが相手の長いパスをインターセプトし、約60mを走り切ってトライした。

 後半は一転、豪州が反撃したが、ウェールズが逃げ切った。両チームとも、個々のフィジカル、スピード、パススキル、判断のはやさが優れている。コンタクトの激しさ、球際の厳しさにも驚かされる。凄まじいコンタクトプレーでは、ハイタックルか、エルボー(肘うち)の反則か、あるいはショルダー(肩)チャージか。そのレフリング(判定)が両チームの物議をかもした。

 ガットランドHCは「レフリーの批判には関わりたくないです」と漏らし、満足そうな顔で試合を振り返った。

「オーストラリアとウェールズの典型的なクラッシュでした。でも、自分たちのチームの選手は冷静さを維持してくれました。勝ちはもちろん、うれしいです。今夜は勝利を祝って、お互い肩をたたき合って喜びたいですね。そして自信を持って、次の試合(フィジー戦/10月9日)に向かっていきたい」

 ウェールズは「ラグビー強国」の伝統を持ちながら、W杯の最高成績は1987年の第1回大会(豪州・ニュージーランド)の3位止まりとなっている。ことしは欧州6カ国対抗を全勝優勝し、このW杯でも優勝候補に挙げられている。

 これでウェールズは2連勝の勝ち点9とし、1次リーグD組のトップとなった。目指すはもちろん、初のW杯制覇である。ジョーンズ主将は静かな口調でこう、話した。

「このスペシャルな時間をチームメイトとわかち合えてうれしい。ただ、これからも危険なチームと対戦していきます。しっかりと準備していきたい」

 各チームの闘志がW杯をさらに熱くする。選手の闘いを、ファンが後押しする。互いをリスペクトし、これに開催地の日本の文化が彩りを添える。ピッチで熱闘がつづき、スタジアムが沸騰するのである。

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