田村優が4年の成長で得たこと「試合の風景が遅く見えるようになった」 (2ページ目)

  • 松瀬 学●文 text Matsuse Manabu
  • 齋藤龍太郎●写真 photo by Saito Ryutaro

 歳月と共に田村は変わった。どちらかといえば、束縛を嫌う"自由人"。シャイな印象を与えるが、ジョセフHC率いる代表ではリーダーグループの一人としてチームを引っ張ってきた。いまやリーチ マイケル主将の良き相棒である。試合では、大声でチームを叱咤激励する。

 選手としては、安定感が加わった。経験値と、パス、キックの精度が増したからだろう。動きが周りの選手と連動し、チームに好リズムを生むようになった。この4年間の成長とは。「例えば、試合中の風景は?」と聞けば、「遅くなった」と漏らした。

「これまで速く動いていた周りが、遅くみえるようになったんです。ほら、久しぶりに試合をすると、周りの動きが高速になるでしょ。それが、ゆっくり、ゆっくりに...」

 ジョセフHCの戦術では効果的なキックを活用し、時にはアンストラクチャー(崩れた局面)を意図的につくっていく。司令塔に寄せる信頼はおおきく、田村と周りの選手との呼吸、連携が勝負のポイントになる。

 連携を密にするため、「周りとよくしゃべるようになった」と明かした。

「こういう状況が起きたらこうだよとか、一緒にプレーの映像を見ながら話し合っています。この場面なら、ここにいってほしいって。それをもっと細かくしていかないといけないと思っています」

 チームメイトと一緒に映像を見る機会は、エディー・ジョーンズ前HCの代表時より大幅に増えた。15人の連携はラグビーの肝である。そういった意味で、周りとのコミュニケーションを痛感したのが、6日に行なわれた壮行試合の南アフリカ戦( ●7-41)だった。

「点差ほど、ネガティブな内容じゃないと思います。たくさんチャンスもつくった。あとはちょっとした勇気だったり、ちょっとした遂行力だったり、ちょっとの精度だったり。やっぱり、こだわるところが、ほんと、ディテール(細部)、コミュニケーションだなということが改めてわかりました。メディアでは、なぜこの時期にこんな試合をするのだと言われましたが、終わって、メチャメチャ、ためになったと思います」

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