田村優が4年の成長で得たこと「試合の風景が遅く見えるようになった」

  • 松瀬 学●文 text Matsuse Manabu
  • 齋藤龍太郎●写真 photo by Saito Ryutaro

 いざ出陣である。ラグビーワールドカップ(RWC)日本大会が20日、開幕する。日本代表の目標は「ベスト8以上」。そのキーマンは、ずばり、SO(スタンドオフ)の田村優(キャノン)だ。重圧を感じながらも、司令塔は「大きな舞台を楽しみたい」と言い切った。

監督からの信頼も厚いスタンドオフの田村優監督からの信頼も厚いスタンドオフの田村優

「やっぱりラグビーの本質は、しっかり準備して、プレッシャーを楽しんで、ギリギリのところを攻めていくこと。成功するか、失敗するかわからないですけど、思い切り、チャレンジしていきたい」

 才能は文句なし、だ。ディフェンスは課題だが、攻撃では天性のセンスを感じさせる。瞬時の判断力、相手のスキを見つける眼、臨機応変のパス、キック。中学校まではサッカーに没頭し、国学院栃木高校でラグビーを始めた。トヨタ自動車などの選手、監督だった父・誠さんの存在とは無関係ではなかろう。

『前へ』の精神を受け継ぐ明大からNECに進み、キャノンへ移籍した。モットーを問えば、田村は「明治なので"前へ"」と笑った。そのココロは。

「とりあえず、(カベを)ぶち破っていく感じですかね。全部、押しのけて」

 2012年4月に初めて日本代表に選ばれ、前回の2015年RWCに出場した。あの南アフリカ戦では終盤に交代出場したが、先発出場はスコットランド戦だけだった。あれから4年、司令塔としてチームをリードしてきた。テストマッチ(国別対抗戦)のキャップ(出場)数は「58」となった。

「常に苦労ばかりでした、日本ラグビーは」と、30歳は本音を漏らしたことがある。日本代表の重み、いわば責任感がのぞく。

「ファーストキャップから今まで、毎試合、その試合が最後になってもいいように準備してやってきました。そこ(重み)はずっと変わらないですね」

 このワールドカップは、田村にとって、代表歴8年間の総決算のような大舞台となる。

「4年前、いろんな人にサポートしてもらいながら、いい結果を出させてもらいました。で、次やるかどうか悩んだ時、またジェイミー(ジョセフ・ヘッドコーチ=HC)に呼んでもらって、やると決めたんです。責任感というか、8年間、ハイパフォーマンスをしていくのが自分のターゲットだったんです」

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