箕内拓郎がW杯で感じた最後の差「60分しかラグビーをできなかった」 (3ページ目)

  • 松瀬 学●文 text Matsuse Manabu
  • 長尾亜紀●写真 photo by Nagao aki

――ラスト20分の違いはなぜでしょうか。

「もちろんベースとして体力差は絶対的にあるでしょう。だから、その後のJK(ジョン・カーワン)も、エディー・ジョーンズも、フィットネスをベースとして、クイックなラグビーをしようとしたんでしょう。さらにいえば、それまでスコットランドやフランスと何試合やったかというと、経験がないんです。選手はもちろん、スタッフ、コーチも、です。口で簡単に"ここから上げていこう"と言っても、実際、からだが追いついていかないんです」

――最後のギアチェンジは体力だけが必要なのでしょうか。

「いや、経験というか、駆け引きもあるでしょう。やっぱり、プレーを選んでいくというのもそうでしょうし、ゲームスピードを上げたり落としたり、戦術的にキックを使うとか使わないとか、そこが大事なんです」

――この年、トップリーグがスタートしました。タフな試合の経験値を上げる環境が少しはでき始めたのでしょうか。

「ただ、インターナショナルではその経験は全くない状況でした。もし、相手がギアを上げて来れば、どのようにしてゲームをスローダウンさせていくのかとか。僕らは、ラスト20分の中でこういうミスをしてはいけないという時にミスを犯していたんです。本当にひとつのミスでトライを何本もとられています。ラスト20分間の中にはいろんなものが詰まっていたなと思います」

――このRWCのレガシーは、ラスト20分の教訓ですか。

「ベースとして互角に戦えるというところまで力は付いてきているというのは、実感できました。でも、最後、どうやって仕留めるのか、なんです。選手やスタッフだけでなく、日本ラグビー全体として取り組んでいかないとダメなんです。世界も同じようなスピードでレベルを上げていくのだから、日本は次の2007年まで、どうやって追いつくのかが課題でした」

――最後の米国戦(●26-39)は勝てると思っていたのですが、動きが重かったですよね。

「それ、中3日ですよ。しかも、移動日が1日ありました。記憶が曖昧ですが、僕と大介を含めて数名は4試合ずっと出ていたんです。そりゃ、しんどかったですよ。それまで、スコットランド、フランス、フィジー(●13-41)の連戦なんて、短期間にやった経験はありませんでした。しかも、中日がスコットランド戦からどんどん短くなっていったんですから」

――日程は過酷でした。

「相手の強度は強いし、フィジカルの準備をしないといけないのはわかっていたんですけど、実際に経験して、そんなにしんどいとは...。オン・オフの切り替えがうまかったので、精神状態はいいんです。でも、グラウンドに立ってみると、思った以上に疲労がたまっているのを感じました」

――終わって、次の4年後のRWCへは。

「最初に言ったように、ワールドカップが純粋に楽しかった。だから、"もう一度、この舞台に立ちたい"と思ったのを覚えています」

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