南アフリカの壁は高かった。日本代表、トライまで残り50センチが遠い (3ページ目)

  • 斉藤健仁●取材・文 text by Saito Kenji
  • 谷本結利●撮影 photo by Tanimoto Yuuri

 トンガ代表戦では13回、アメリカ代表戦では12回と反則が多く、それで相手にペースを握られた場面があった。だが、この試合では規律を守る意識が高く、前半4回・後半4回の計8回と少なかった。また、モールで相手に押されても反則して止めることなく、我慢して戦うことができていた。

 もうひとつはスクラム。7月に施行された新ルール(※)の影響もあり、PNCでは安定したスクラムができていなかった。ただ、8月の網走合宿で課題に取り組んだ結果、南アフリカ代表戦ではマイボールスクラムを9本、しっかりとキープすることができた。

※スクラムを組む際、レフェリーのセットのコール前にFW第1列の選手は頭を相手選手の首や肩に触れてはいけない。

「スクラムは非常にうまく機能していた。南アフリカの強いFW陣に対し、いいスクラムを組めていたのは、長谷川慎スクラムコーチの献身的なコーチングのおかげだ」(ジョセフHC)

「スクラムの後ろの選手の足の使い方がうまくなった。ファーストスクラムでいけるという自信を得ることができた。(スクラムで)プレッシャーをかけられたし、成長した部分を見せられた」(稲垣)

 モールからのディフェンスも修正できており、セットプレーではワールドカップで戦える目処がついたと言えよう。

 ただ、ラグビーは得点を競う競技だけに、やはり相手陣22メートル内まで入ったならば、きっちりと得点に結びつけないと勝てない。今回のような強豪相手には、1回のチャンスで取り切る遂行力が欠かせないだろう。

 また、ワールドカップ期間中も高温多湿の天候が続くかもしれず、相手が今回と同じようにキックを多用してくることも十分に予想される。これらのことも含めて、本番までに修正することが必須だ。

 残された時間は2週間。リーチはこう語る。

「ワールドカップ前に南アフリカと対戦できて、本当によかった。あらためて、世界の強さがわかりました。このチームは修正能力が高いので、(ワールドカップまで)十分に時間はあります。

 このチームは間違いなく、歴代最強のチームになっている。今日の負けから得たものもたくさんある。(それを)エネルギーにして(ワールドカップの)予選プールひとつひとつを大事に戦っていきたい」

 9月20日のワールドカップ開幕戦、日本代表はフィジカルの強いロシア代表(20位)と対戦する。「南アフリカ戦がいい教訓になったから勝てた」という試合にすることができるか。

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