中村亮土はW杯と社業を両立。「ボールは努力した者のほうに転がる」 (2ページ目)

  • 斉藤健仁●取材・文・撮影 text & photo by Saito Kenji

 中村は持ち味のタックルやフィジカルだけでなく、スキルやラグビー理解度の向上を目指した。「いつ呼ばれてもいいように」と、社業が優先されるオフ中も身体を鍛え続けた。そして2017年3月、NDS(ナショナル・ディベロップメント・スコッド)の日本代表候補合宿に追加招集される。

 このような状況は、帝京大時代にも経験していた。帝京大2年の2012年、中村のポジションは控え。ところが、日本選手権2回戦の東芝戦でケガ人が出たことにより、先発の座を掴んだ。試合には負けたものの、それを見たエディー・ジョーンズHCは中村を日本代表合宿に招集した。

 ラグビー界ではしばしば、「ボールは努力した者のほうに転がる」と言われる。中村はまさに、それを地でいく選手のひとりだ。

 常に己を磨くことを忘れない。体重94kgながらベンチプレスで150kgを上げ、フィットネステストで全選手中トップの数字を叩き出した。「世界一のフィットネス」を求めるチームの期待に応えている。

 2017年春にアジア勢と対戦した日本代表戦では、4試合中3試合に出場。「SOとCTBの両方でプレーできる選手」とジョセフHCが評価し、2017年秋も日本代表メンバー入りを果たした。しかし、ホームでのオーストラリア代表戦、アウェーでのトンガ代表戦、フランス代表戦は1試合も出場することができなかった。

 ただ、中村にとっては、この遠征が大きな意味を持っていたと言う。

「メンバー外の選手は、相手よりもフィジカルに戦わないといけないと思って練習に臨んだ。1パーセントに満たないかもしれないが、そういう働きかけをすることでチーム全体がよくなっていく。チームがよりよくなるために動いたと、自信を持って言えます。この遠征から、徐々にスタッフやコーチ陣に(自分は)そういう人間だと知ってもらえた」

 ジョセフHCは、スター選手よりも真面目に働き続ける「チームマン」を好む傾向にある。中村は、そのお眼鏡に適ったのだ。

 2018年はサンウルブズにも呼ばれ、同年6月にはイタリア代表戦に途中出場。2018年の秋にはリーダーグループの一員となって、かつて薫陶を受けたジョーンズHC率いるイングランド代表戦で、7万人ものアウェーの大観衆の中、フィジカルを生かしてトライも挙げた。

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