2019.09.03

大畑大介のラグビーW杯の思い出
「あるプレーでメチャメチャ怒られた」

  • 松瀬 学●文 text Matsuse Manabu
  • 齋藤龍太郎●写真 photo by Saito Ryutaro

――その思いが次のウェールズ戦の"伝説のトライ"につながったのですね。

「はい。要は、僕にとって、ラストチャンスみたいなものだったんです」

――試合は15-64で敗れましたが、大畑さんのトライは鮮烈でした。自身の記憶でも光り輝いていますか。

「いや、全然」

――私の中では閃光のイメージなんですが。ターンオーバーしたボールを、SHバショップが右ラインのふたりを飛ばし、大きなパスを外のWTB(ウイング)大畑さんに投げました。やや曲線を描きながらマークを外し、右ライン際をイッキに加速しました。約30メートル。戻る相手を2人、3人振り切り、右隅に飛び込みました。

「自分の正面の選手がレギュラーじゃなかったので、イケるんじゃないかなって。あのワールドカップは(自分は)まだ未熟だと思っていたのですが、持っているものはすべて出そうとは考えていました。チームからはトライをとることを託されていたので、あそこは絶対、いかないといけないと思って走りました」

――トライの瞬間の気分は。

「どうでしたかね。相手からしたら止められるんじゃないかというコースを走ったんです。だから、そいつの想像を完全に超えたと思いました。相手がどの間合いで抑えに来ているのがわかったので、あえてさらに外側にいったんです。8万人のお客さんのスタジアムで、その9割9分がウェールズの応援じゃないですか。その人たちが一緒になって盛り上がってくれたのがうれしかったですね」

――確かにカーディフのミレニアムスタジアムの熱気はすさまじいものがありました。

「今思えば、すごかったですよ。あれだけのお客さんの前でプレーできたのが、一番の思い出ですね。(試合前の)国家斉唱でも、上から、全方位的に歌声が反響してくるんです。あの快感は忘れられないですよ。どこに自分がいるんだろうって、異次元にいるような感覚に襲われました。初めて、からだが震えました。圧倒されたというか、メチャクチャ気持ちよかった。ああ、ここでプレーができるんだって」

――1999年ワールドカップで一番に思い出すのはやはり、そのトライですか。

「いや、プレーヤーとして全然アカンかったサモア戦ですね。80分間、すべてです。一番大きな経験ですね。準備がしっかりできていなかった情けなさです。そりゃ、トライをとったシーンも記憶にはあります。どのトライも、さかのぼってのプレーは思い出します。でも、それを自分で満足したことはありません。(テストマッチ世界記録の)69個のうち、ひとつも満足していないので」

――3戦目のアルゼンチン戦(●12-33)はどうでしたか。

「完全にゲームをコントロールされました。(相手に)次のステージにいくために、点差を計算されてゲームをつくられていました。何もできなかった。何もさせてもらえなかったに等しいかな。ウェールズ戦はたくさん点をとられたけど、正直、まだ相手のスキを感じた試合でした」