ラグビー日本代表が決定。司令塔・田村優が作る「混沌」の支配がカギ (3ページ目)

  • 松瀬 学●文 text Matsuse Manabu
  • 齋藤龍太郎●写真 photo by Saito Ryutaro

  SO田村は、リーチ・マイケル主将の言葉を借りると、「天才」となる。日本のラグビースタイルは、「リトル・ニュージーランド」か。司令塔の田村が混沌とした状況をつくりながら、自分たちでその状況をコントロールしていく。日本の布陣(メンバー)を簡単に言えば、エリアを奪えるバックスと言っていい。

 不安は、田村がケガで戦列を離れたときである。代わりはいない。ジェイミーHCが想定するメンバーが最後まで戦い抜けばいいのだが、もしも、田村がケガをしたら...。ジョセフHCは「ケース・バイ・ケース。31人でお互いをカバーできるように試行錯誤して、今回のメンバーに落ち着いた」と言うが。

 フルバックでは、苦労人の山中亮平(神戸製鋼)が初選出された。早大時代から逸材と騒がれながら、不注意によるドーピング違反で「空白の2年間」を過ごした。どん底だった。その時、故・平尾誠二さんから掛けられた言葉が「我慢しろ」だった。

 山中はプレーに安定感を増した。フォア・ザ・チームの献身プレーができるようにもなった。網走合宿で31歳は「選ばれたら」と前置きして、感慨深そうな顔をつくった。

「うれしいですね。平尾さんには、とくに感謝しています」

 チームスローガンが『ONE TEAM』である。31人中、RWC経験者は10人にすぎない。地元の日本開催のRWC。確かに日程的には恵まれている。が、大きなプレッシャーがかかる中、いろんなラグビー人生を歩んだ選手たちがひとつになって、思い切って、チャレンジすることができるのかどうか。かぎは、『結束』『プライド』である。

 9月20日の開幕まで、あと約3週間。9月6日の南アフリカとの壮行試合(熊谷)を経て、日本代表は敵の情報データ、戦術を落とし込み、アジア初のRWCで、世界の強豪に挑戦することになる。

 4年前のRWCでは、優勝候補の南アフリカに番狂わせを演じた。こんどは初のベスト8で日本ラグビーの歴史を創ることになるだろう。

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