日本の司令塔・田村優はラグビーで必須の能力をサッカーで学んだ (3ページ目)

  • 斉藤健仁●取材・文・撮影 text & photo by Saito Kenji

 ただ、田村もずっと順風満帆だったわけではない。2017年6月に行なわれたアイルランド代表との1戦目では低調なパフォーマンスに終わり、2戦目では先発の座から脱落。メンバー外という悔しい経験もした。

 それらを経験したことで、田村にはリーダーとしてチームを引っ張る覚悟が生まれた。チームメイトに声をかけて、積極的に指示する姿を見せるようにもなった。田村自身は「(ジョセフHCに)声を出してリードしてほしいと言われるので」と謙遜するが、今では若い選手から「優さん、優さん」と慕われている。

「(田村)優はこの4年間で、とくにリーダーシップ面が成長した。最初は『リーダー陣から外してくれ』と言っていたが、今では本当に(チームに)必要な存在です」

 間近で見ていたリーチは、リーダーとして成長した田村についてこう語る。そしてPNCに向けては、「走る力、技術、戦術は問題ない。成長しないといけないのは、ゲームマネジメント。僕と(田村)優でゲームコントロール面を磨かないといけない」と決意を述べた。

 ワールドカップに向けて強化を続けてきた田村は、「(2015年ワールドカップの頃と比べて)今のほうが強い」と胸を張る。「個人的に伸ばしたいところは?」を聞かれると、「全部ですね。本当に終わりはないです。もっともっとよくなりたい」と語気を強めた。

 ジョセフHCは田村について、「自由にプレーしている時が、一番いいプレーをしている」と評する。あまり悩まず、直感で判断してプレーしたほうがいい結果になっているというのだ。

 田村の好きな言葉は、明治大ラグビー部出身者らしく、「前へ」。PNCでも、ワールドカップでも、田村がピッチ上で自由に動き回り、チームを前へ出せば出すほど、日本代表の勝利はグッと近づく。ワールドカップで悲願の「ベスト8以上」は、田村が振るうタクトにかかっている。

3 / 3

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る