ラグビー日本代表の落選サプライズ。
大舞台に強い山田章仁がなぜ?

  • 斉藤健仁●取材・文・撮影 text & photo by Saito Kenji

 この言葉からも、厳しい状況なのは理解していた。だがそれでも、個人的には「山田は選ばれるのでは?」と思っていた。

 2016年の秋にジェイミージャパン体制になってから、山田は福岡、レメキに次いで出場時間、試合数ともに多いWTBだった。「大舞台に強い選手」として名を馳せ、2016年11月のウェールズ代表戦では敵地でトライを挙げ、昨秋のイングランド代表戦でも14番をつけて先発出場していた。

 2015年ワールドカップの活躍は言うまでもなく、2017年度のトップリーグでは2度目のトライ王を獲得。その決定力は、33歳のベテランになっても健在だった。日本代表を率いて2年8カ月となるジョセフHCも、山田がどんな選手かは十分にわかっていたはずだ。

 しかし指揮官は、山田の名前を挙げることはなかった。

 ジョセフHCは今回の合宿メンバー42名を選考する際、身長181cmの山田ではなく、身長184cmのWTB/FBヘンリー ジェイミー(トヨタ自動車)と、身長185cmで唯一の海外組のWTBアタアタ・モエアキオラ(神戸製鋼)を選んだ。「苦渋の選択だった」と話した後、こう続けた。

「バックスリーには、福岡やレメキ、松島(幸太朗/サントリー)といった『Xファクター(特殊能力)』を持った選手が揃っている。そして、ワールドカップで対戦するアイルランド代表などの強豪国は、ハイボールを蹴って空中戦でプレッシャーをかけてくることが予想される。よって、空中戦に耐えることのできる大きい選手が必要だった」

 山田は個人の能力で局面を打開するタイプではなく、周りの選手に活かされて飛躍するタイプだ。また、自身でも「(福岡やレメキと違って)自分には特別な能力がない」と認めている。山田もハイボールの処理は上手なのだが、ジョセフHCはより身長が高く、当たりにも強い選手を選んだのだろう。

 ジョセフHCは2017年から、「複数のポジションができる選手」を重用している。イエローカード(10分間の一時的退場)やHIA(脳震盪かどうかのチェック)によって選手がピッチから離れた場合や、想定外のケガに対応するためだ。

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