林敏之が考えるW杯躍進のヒント
「日本人はマラソンなら金をとれる」

  • 松瀬 学●文 text Matsuse Manabu
  • 齋藤龍太郎●写真 photo by Saito Ryutaro

――でも、ラグビー日本代表は最後に逆転される負けパターンが続きました。

「僕ら自身が後半弱いような刷り込みがあったのかな。それを、(2015年大会の日本代表は)ぶち壊してくれたよね。ひとつの勝ち方を見せてくれた。今、そこに新しいものを加えようとやっているけど。(ジェイミー・ジャパンの戦術の一つである)キックは諸刃(もろは)の剣じゃないけれど、逃げのキックをしたらやられるし、それを有効なキックにしていくためには、ものすごいフィットネスがいるだろうね。(キック対応に)相手より早く機能するためには、15人すべてがグラウンドの中で戦う姿勢になっていられるような状況じゃないと戦えないだろう」

インタビューは4月某日、『こどもラグビーフェスティバル2019』を開催中の横浜スタジアムのスタンドで敢行された。時折、グラウンドから子どもたちの歓声が聞こえてくる。それが耳に心地よかった。

――RWCのレガシーといえば、こういったイベントもワールドカップが日本で開催されるからでしょうか。

「そうだね。世界で初めてだね。これもワールドカップの年だからできたわけだ、たぶん。(RWC決勝の舞台となる日産スタジアムで今回)12歳以下の子どもたちの世界大会をやっているけど、何というか、子どもたちにはグラウンドの中で体験した素晴らしい瞬間を大事にしてもらいたいよね。そういう真実の瞬間をいっぱい体験してもらいたいんだ。僕はラグビー(の現役)を離れた後も、そういう感動を伝えたいと思って、研修、教育の仕事をしている。NPO法人をつくって、子どもたちにラグビーを伝えている。僕は、ラグビーを通していろいろな恩をもらったから、もらった人には恩を返せないけど、次(の世代)に送っていこうと思っているんだ」

――いつも口にする"恩送り"ですね。

「人は感動したら、エネルギーが出る。理性から力は生まれないでしょ。感動から力は生まれる。子どもたちが感じた感動が広がっていってほしい。子どもたちがたぶん、素晴らしいラグビーに触れて、また国に帰って、恩送りをしてくれるのかな」

――アジア初のRWCです。秋のRWCは意義深い大会になりそうですね。

「だってさ、決勝戦で、この(日産)スタジアムが満杯になって、ウォォォ~ってなるわけだ。キャパが7万2千かな。日本最大級のスタジアムが大歓声で埋まるわけだ。その体験価値って、日本ではなかなかないものでしょ」

――決勝のカードを予想すると。

「わからないなあ。まあ、ジャパンが出てきてくれたらいいけどね」

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