34歳でも衰えぬ「小さな暗殺者」。ラグビーW杯に向けて調子も上々 (3ページ目)

  • 斉藤健仁●取材・文・撮影 text & photo by Saito Kenji

「外国人選手と話していても、日本のラグビーが本当に好きという選手が増えましたし、みんな日本語でしゃべりたがります。ラグビーに関係なく、日本語で会話している外国人を見るのはうれしいですし、これぞラグビーのつながり、広がりではないかなとすごく感じられます」(田中)

 大学時代からニュージーランドでのプレー歴がある田中は、率先して外国人に英語で話しかけ、チームの和を保つことに尽力している。マシレワのパフォーマンスを引き出したのも、ピッチ外での田中のファインプレーとも言えよう。

 ただ、試合はサンウルブズのゲームキャプテンFL(フランカー)ダン・プライヤーが後半からいなくなったこと、相手のプレーの精度が上がったこともあり、23-29と逆転負けを喫してしまった。

 一方、60分以上プレーした田中を見るかぎり、フィットネス面は十分に戻ってきているようだ。

 昨年、ブラウンHCが「5年前の田中に戻ってほしい」と言っていたことを思い出す。5年前と言えば日本代表がウェールズ代表を下した頃だが、田中のパフォーマンスは群を抜いていた。34歳となったが、3度目のワールドカップに向けて徐々に調子が上がってきたように感じる。

 ハリケーンズ戦では後半25分、相手ボールのスクラムでNo.8(ナンバーエイト)にタックルしてノックオンを誘った。そのプレーは、かつて日本代表を率いたジョン・カーワンが田中を「小さな暗殺者」と呼んだこともうなずける迫力だった。また、相手FLに危険なタックルを受けたあと、何もなかったようにプレーに戻る姿もチームを勇気づけた。

 試合後、田中は逆転負けを喫したことに反省の弁を述べる。

「僕もミスをしてしまいましたし、リーダーがいなくなってパニックになってしまった。日本のラグビーはまだまだできるぞ、ということをファンの皆様に見せたかったのですが......」

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