天理大の主将が獅子奮迅の活躍。初優勝の夢は最後の円陣で後輩に託す (3ページ目)

  • 斉藤健仁●取材・文・撮影 text & photo by Saito Kenji

 今年は島根にとって、まさに挑戦の1年だった。キャプテンに抜擢されただけでなく、「トップリーグに行って、さらには日本代表になりたい!」という夢を叶えるべく、将来を考えてFL(フランカー)からHOにコンバートした。

 HOはスクラムで第1列の最前線を任され、ラインアウトではボールを投げ入れる、まさにFWのなかで「司令塔的な役割」を担う重要なポジションである。島根は日々努力を重ねて、転向したばかりとは感じさせないまでにプレーの精度を高めた。スクラムを担当する岡田明久FWコーチも、「HOとして最初はド素人でしたが、身体もデカくなって強くなった」と目を細めたほどだ。

 島根の父も、天理大のラグビー部だった。幼稚園児の5歳から天理の地で楕円球を追い、7年前に天理大が大学選手権の決勝に進んだ日、天理中の3年生だった島根少年は朝4時のバスに乗って国立競技場まで駆けつけ、先輩たちの勇姿を見届けた。そして今、大学4回生となった島根は、同じ舞台で負けはしたものの、キャプテンとして正々堂々と、ひたむきに戦った。

 島根を筆頭とする天理大フィフティーンの想いは、きっと後輩たちにもつながっていくはずだ。島根は「決勝で負けた悔しさを忘れずに、あと一歩届かなかったのは何か原因があると思うので、それを見つけて日本一を目指してほしい」とエールを送った。

 4月から島根は、トップリーグの強豪チームでプレーする。キャプテンとして最後の円陣では、「来シーズンは優勝するぞ!」という言葉で締めくくった。「大学日本一になる」という島根と天理大ラグビー部の想いは、後輩たちに託された。

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