早慶戦は劇的フィナーレ。そこには4年生の矜持とドラマがあった (3ページ目)

  • 斉藤健仁●取材・文・撮影 text & photo by Saito Kenji

 その成果は、この試合でも見てとれた。前半11分には左サイドから右サイドまで戻って相手がトライする寸前でタックルを決め、20分過ぎにも激しいタックルで頭を強打するなど、身体を張ったプレーを随所で披露した。「早稲田の強みはディフェンス。ディフェンスからチームを作る」。それはまさに、指揮官の掲げる言葉に応えたものだった。

 対抗戦では2試合の先発に終わった佐々木を、相良監督はこの大舞台でスターターに起用した。その意図を聞くと、こんな答えが返ってきた。

「佐々木は高校(桐蔭学園)時代、慶応高に(花園予選決勝で)負けて終わっているので、それにかけたいなと思いました」

 佐々木は桐蔭学園3年時、慶応の総合政策学部にAO入試で合格していた。しかし、11月に古田らのいる慶応高に敗戦して花園を逃すと、合格を辞退して早稲田の社会科学部を自己推薦で再入試。そんな背景もあり、佐々木は慶応の今の4年生に対して強いライバル心を持っている。

「(先発で出場して)慶応に勝つ、という目標を達成することができました」という佐々木だが、けっして喜びを露わにすることはない。「(優勝した時にのみ歌う第二部歌)『荒ぶる』を歌いたい。そのために(慶応ではなく)早稲田に来ました」とキッパリと語った。

 この試合に先発した早稲田の4年生は3人。4年生の割合は、他の大学よりも極端に少ない。ただ、佐々木を筆頭に、途中出場した3人の4年生FWが大いに躍動した。「負けたら大学ラグビーが終わってしまう」という4年生たちの意地とプライドを感じた試合だった。

 準決勝では「宿命のライバル」明治大が立ちはだかる。相良監督は「一度、死んだ身です。明治のことを考えるより、久しぶりに超える正月なので、自分らの力を出し切りたい」と腕を撫(ぶ)す。100周年のアニバーサリーイヤーを迎えている早稲田は、はたして10シーズンぶりの大学王者に返り咲くことができるのか。「荒ぶる」まで、あと2勝だ。

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