包囲網が強まっても帝京大に迷いなし。早大撃破で偉業達成へひた走る (2ページ目)

  • 松瀬学●文 text by Matsuse Manabu
  • 齋藤龍太郎●写真 photo by Saito Ryutaro

 11月4日のゲームスローガンは『帝京ラグビーを楽しめ』だった。才能ある集団が、闘争心に火をつければ、チーム力は一気に高まる。苦しんだ慶大戦(24-19で勝利)を反省し、この2週間、基本プレーを中心に準備してきた。選手同士でぶつかる"生タックル"、ボールの運び方、ブレイクダウンの2人目...。

 立ち上がり、帝京らしいディフェンスで流れをつかんだ。キックオフ直後、早大のはやい球出しからの連続攻撃を浴びた。約3分間、ゴール前のピンチがつづく。

 赤色ジャージはFWもバックスも、タックルしてはすぐに立ちあがり、周りとの連携をとる。赤い壁が少しも崩れない。人数が減らないのだ。スクラムからの早大の攻撃の18フェーズ(局面)目。猛タックルで、とうとう相手のノックオンを誘った。

 ボールを奪回するターンオーバー。窮地を脱した。ロックの秋山大地主将は言った。

「試合の入りから、ディフェンスでも自分たちのからだをしっかりあてて、相手にプレッシャーをかけていこうと思っていました。前半は僕らの強みを出せました」

 攻めては、前半6分、ラックから左ラインに回し、ウイング宮上廉が先制トライ。その7分後には、ラインアウトから左プロップの岡本慎太郎が力強く突進、ラックサイドをFWがタテに突き、最後は右プロップの淺岡俊亮がゴールポスト下に飛び込んだ。

 前半20分はゴール前のPKでスクラムを選択し、まっすぐ押して、圧巻のスクラムトライをもぎとった。10分後にも、スクラムをぐいぐい押し込んで、またもスクラムトライを重ねた。唯一不安視されていたスクラムでも早大を押し崩した。帝京大にとって、早慶明相手のスクラムトライは珍しい。

 左プロップの岡本は硬い顔つきのまま、「スクラム、楽しかったです」と言った。誠実、朴とつ、ほかに言葉が見つからない。

「試合直前も、岩出監督に直接、スクラムのアドバイスをもらいました。"自分のやるべきことをやればいいんだ"と。今日は気持ちの部分で乗っていました」

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