「ダン・カーター劇場」で昨年王者を撃破。
主役はコメントも格好いい

  • 斉藤健仁●取材・文・撮影 text & photo by Saito Kenji

 元日本代表の指揮官エディー・ジョーンズ・ヘッドコーチ(現イングランド代表HC)はかつて、「カーターは80分間、安定したプレーを続けることができ、一度だけ、ひらめきのあるプレーをする。だから効果的なのだ」と評していた。その言葉を裏づけるようなプレーがあったのは、24分のことだ。

 中盤でパスを受けたカーターは、左足のアウトサイドで相手ディフェンスの裏にショートパントを放つ。そのボールに元豪州代表CTB(センター)アダム・アシュリークーパーが反応し、それをキャッチしてゲイン。相手のペナルティを誘うことに成功し、PGをカーターが冷静に決めて23-3と点差を広げた。このひらめきのあるプレーによって、その後サントリーのディフェンスがカーターをマークしづらくなったのは間違いない。

 後半から雨が降り出したが、カーターは80分間プレーを続けた。結果、神戸製鋼は36-20でサントリーに勝利。まだコンディションは100%ではなかったかもしれないが、パス、ラン、キックと高いレベルのパフォーマンスはまさに圧巻だった。

 カーターのプレーに対し、負けたサントリーの元日本代表SO沢木敬介監督も賛辞を送る。

「すばらしい教科書が日本に来た。それは(日本ラグビー界にとって)すごくプラスです。ラグビーをやっているチビっ子全員がお手本になるプレーを見せてくれるのですから。スペースに対する判断がすごく速くて、キック、パス、ラン......すべての判断がすばらしい」

 カーターは1トライ、2ゴール、4PGで計21得点を挙げてMOM(マン・オブ・ザ・マッチ)に選出された。「チームメイトが非常によくやってくれましたので、自分も自分の役割を果たし、すんなりとプレーをすることができた。MOMは誰が選出されてもおかしくない。チームメイトに感謝を伝えたい」。

 カーターはプレーだけでなく、コメントまでも格好いい。

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