釜石鵜住居復興スタジアムが完成。
レジェンドたちも「想い」をつなぐ

  • 松瀬 学●文 text Matsuse Manabu
  • 谷本結利●写真 photo Tanimoto Yuuri

 夢といえば、新日鉄釜石と神戸製鋼のOB戦も行われた。V7メンバー同士の「レジェンドマッチ」には釜石のスタンドオフの松尾雄治さん、プロップ石山次郎さん、スクラムハーフ坂下功正さん、神鋼のロック林敏之さん、大八木淳史さん、スクラムハーフ堀越正巳さんら往年の名選手がずらりと並んだ。

 さすがにみな走力は落ちたが、時折、キラリと光るプレーでスタンドを沸かせた。64歳の松尾さんは疲れから、キックの後、後ろによろめくシーンもあって、「OBマッチって2度とやらないと思う」と記者を笑わせた。

 それでも、新スタジアムでのプレーは「夢のようだった」としみじみと漏らした。

「震災は忘れないけど、この震災があったからこそ、もっと郷土愛とか、一致団結してひとつのことをやろうとかいう気持ちが芽生えてきている。マイナスをプラスに変えていくのが釜石だと思っている」

 61歳の石山さんは定年後、みずから建設会社に職を求めて、新スタジアムの建設現場で働いてきた。黙々と走り、スクラムを組んだ。

「自分が関わったスタジアムだから感慨深いですよ。よく、ここまで来たなと思います。ただ僕らの目的は、(スタジアムを)造ること、ワールドカップを成功させることだけじゃない。それを手段として、どう街の将来に役立てていくことではないですか」

 同感である。いわばひとつのステップに過ぎない。大事なのは"これから"なのである。

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