イケメン松井千士が再びスター街道へ。
セブンズW杯で切り札となる

  • 斉藤健仁●取材・文・撮影 text & photo by Saito Kenji

「21年間、生きてきたなかで一番悔しい経験でした。今から思えば、まだまだ子どもで、チームの躍進を心から喜べませんでした。ただ、メンタル的には強くなったと思いますし、この悔しい気持ちを自分の心のなかに持って、2020年の東京五輪では一気に(気持ちを)爆発させたいなと思っています」

 その悔しさをバネに、さらなる高みを目指した松井は、自分を成長させてくれる場として、大学卒業後はチャンピオンチームであるサントリーに身を置いた。

 U20日本代表時代にも指導を受けた沢木敬介監督のもと、国際舞台を経験してきた日本代表選手たちと練習することで、松井はスキル面の成長だけでなく、「考え方が大きく変わった」と言う。仕事をしながら毎日ウェイトトレーニングを行ない、3回の食事以外にも2回の捕食を日課とし、70kg台だった体重を85kgまで増やすことに成功した。

 また、監督から「ラグビーナレッジ(理解力)を高めろ」と言われた松井は、それまであまり見なかった世界の強豪チームの試合映像を毎日のように見るようになり、積極的に先輩とも話すことで学びを得たという。「学生時代は『質問してもいいのかな?』と遠慮していましたが、貪欲に聞くようになってコミュニケーション量が増えましたね」。

 昨年、セブンズ日本代表は松井に声をかけた。だが、松井はその申し出を断り、サントリーでのラグビーに集中することを選択する。

 それは、すぐに結果となって現れた。昨年度はルーキーながらトップリーグ第3節に途中出場を果たすと、第4節では初先発して初トライを記録。さらに前半戦の山場となった「ライバル」パナソニックとの第9節では、前半25分までに2トライを挙げて成長した姿をラグビーファンに印象づけた。

 しかし、好事魔多し、である。2トライを挙げた直後の前半35分、後方からタックルを受けた松井は、左足の親指以外の4本を脱臼骨折する大ケガを負ってしまう。試合後すぐに手術を行なったのもの、やっと足をついて歩けるようになったのは、チームが2年連続2冠を達成した1月初旬。松井はふたたび、チームが歓喜に浸る瞬間をスタンドで見守らざるを得なかった。

2 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る