W杯ベスト8にまっしぐら。ラグビー日本代表が強豪ジョージアに完勝 (3ページ目)

  • 松瀬 学●文 text by Matsuse Manabu   齋藤龍太郎●写真 photo by Saito Ryutaro

 それまで、日本の右プロップ、23歳の具智元(グ・ジウォン)は相手の引いてくる組み方に戸惑っていた。が、その時は、フッカー堀江とのバインディングをより強め、グイと内側に押した。そのまま押すと、相手はずらしながら頭を上げた。スクラムが反時計回りにばらけた。

 苦しくて、相手はボールを出した。パスが乱れる。ノックオンしたボールをセンター立川理道が拾い、センターのラファエレ ティモシーが前進する。ラック。代わったばかりのロックのヴィンピー・ファンデルヴァルトが左サイドに持ち出し、インゴールに飛び込んだ。

 この瞬間、ベンチでは長谷川慎スクラムコーチが両手を突き上げた。そりゃそうだ。スクラムで獲ったトライのようなものだった。ゴールも決まって、16-0となった。勝敗の帰趨(きすう)は見えてきた。

 この日、スクラムは18本あった。マイボールスクラムが10本、うち1本はペナルティーをとられてしまったが、残る9本は余裕でコントロールした。イタリア代表との2試合を合わせると、マイボールスクラムは22本、うち21本の成功となる。いい数字だ。

 2015年のラグビーワールドカップ戦士の真壁が言葉に実感を込めた。

「ジャパンのレベルがすごく上がったなと感じた試合でした。4年前とはレベルが違う。これまでは、ジョージアに対し、スクラムがイヤだなという感覚になっていた。いまは、全然問題ない。むしろこちらから仕掛けていこうという気持ちですから」

 テストマッチ3連戦の最大の収穫はスクラム、ラインアウトの安定である。記者から、「半端ないスクラムを」と水を向けられると、堀江は愉快そうに笑った。

「ああ。そう書いておいてください。『ジャパン、半端ない』って。『めっちゃ、プレッシャーかけるやん』って。『そんなん普通できひんやろ』って」

 スクラムでいえば、とくに右プロップの23歳、具の成長が大きい。駆け引き、経験値が課題だが、イタリア、ジョージア相手に押し負けなかった。具も「自信がつきました」と少しだけ笑った。

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