サンウルブズ、刀を振り回す「剣豪」のラグビーで、ついに今季初勝利 (3ページ目)

  • 松瀬 学●文 text Matsuse Manabu
  • 齋藤龍太郎●写真 photo by Saito Ryutaro

 攻めてはFWがどんどん前に出て、右に左に振っていった。ボールポゼッションは4割と低くても、パスとキックをバランスよく使い、テンポよく攻めた。まるで剣豪の刀さばきのごとき展開で計5トライ。さらにはスタンドオフ、ヘイデン・パーカーが正確無比な左足キックで7本のPK、5本のゴールキックをすべて蹴り込んだ。
 
 パーカーは笑った。

「今日はグッド・デーだった。キックを全部決めるのは気分がいい。勝利に貢献できて、とてもハッピーだ」
 
 試合終了後のロッカールーム。約1時間、選手、ノンメンバー、スタッフが一緒になって、初勝利を缶ビールで祝った。トニー・ブラウンコーチはこう、声を上げたそうだ。

「勝ったときのビールはおいしいね」
 
 またフッカー堀江翔太は「勝つまで伸ばそう」と決めていたモジャモジャのあごひげを剃ったのだった。
 
 もちろん、まだ1勝ぽっちである。通算1勝9敗。勝利に酔っている余裕はない。サンウルブズは海外で6試合を残している。勝敗はともかく、より大事なのは来年のラグビーワールドカップに臨む日本代表に、どうつなげるかなのだ。

 あえて収穫を言えば、高いレベルのリーグでも揉まれるなかで、個々のフィジカル、判断力、および経験値は上がっているだろう。とくに若手選手にとっては。
 
 例えばナンバー8姫野和樹である。この日もフィジカルの強さを見せ、相手を何度も弾き飛ばした。アタックの強さには定評があったが、タックルにも力強さと幅が備わった。
 
 成長した部分を問えば、姫野は「タフになりました」と自信をのぞかせた。

「タックルは、低く低くいき過ぎないようになりました。自分はフィジカルがあるので、少々高くても当たり負けしないというのがわかりました」

 さらに「ライバルは?」と聞けば、23歳は口元を少し緩めた。

「ズバリ、自分です。ここで満足してはいけません」
 

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