創部100年、低迷する早稲田大
ラグビー部を救うのは「この男」か?

  • 斉藤健仁●取材・文・撮影 text & photo by Saito Kenji

 ただ、当の齋藤は冷静に先を見据えている。

「通用した部分よりも足りない部分が出ました。パスひとつにしても精度を高めていきたいし、ジョセフHCのラグビーはSHからのキックも大事なので、そういったところを伸ばしていきたい」

 一方、早稲田大の現状については、1ヵ月ほど留守にしていたチームのことが気になっていたという。筑波大戦では給水係として戦況を見つめ、試合後はチームメイトに積極的にアドバイスをする姿があった。

 昨年までの2年間、早稲田大は選手を70mの横幅いっぱいに配置し、ボールを左右に大きく動かしながらトライを狙うラグビーを指向していた。ただ、今年は戦術が変わり、重層的にSHとSO(スタンドオフ)の横に選手を配置し、ボールキャリアがしっかり前に出ながらトライを狙っている。齋藤いわく、「型にはまらない、自分たちで考えるラグビー」だ。

 3年生になった齋藤は、今季の意気込みをこう語る。

「昨年以上に自分が引っ張るという責任を持って、リーダーシップを持ってやりたい。(新しい戦術では)SHのゲームコントロールやパスさばきがより大事になってくるので、自分がゲームを動かすという気持ちで勝負したい」

 わずか1ヵ月という短い期間だったが、ニュージーランド遠征が齋藤を大きく成長させたのは間違いないだろう。

 早稲田大の再出発は決して順風ではないが、今年の大学ラグビーシーズンは始まったばかり。春から夏、そして夏から秋にかけて、個々のタレントとチームが成長すれば、ふたたび強い「アカクロ」の姿が戻ってくるはずだ。

 創部100年という節目の年に、早稲田大は2008年度以来の王者に返り咲くことができるか――。早稲田大が日本一になったときにだけ歌う第二部歌『荒ぶる』をスタジアムに響かせるためには、3年生の齋藤直人の存在は欠かせない。

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