サンウルブズ開幕6連敗。それでもW杯へ、
チームは成長しているのか

  • 松瀬学●文 text by Matsuse Manabu
  • 齋藤龍太郎●写真 photo by Saito Ryutaro

 駆け引きである。3本目のスクラムでは組み負けで、右プロップの具智元(グ・ジウォン)がやられてしまった。まだ若い。つぶれた右耳に真っ赤な血がへばりついた23歳が反省する。

「相手の1番がすごく隠してきて、すごく窮屈に感じて。2番の頭が自分の肩に当たってきて。受けながら組んでしまった」

 つまり、相手の1番が少し下がって、肩を2番にグイと入れて1、2番の頭のスペースを消したため、具は内側向きに無理に組まざるを得なかったのだろう。これでは後ろのロックの押しは前にはいかない。負ける。

 これも経験か。スクラムは組む前から戦いが始まっている。組み勝つか、組み負けるか。レフリングの解釈が変わり、組む前の見え見えの体重掛けは反則をとられるようにはなったが、それでも極力、重心を前のめりに移し、先に仕掛けようとする。

「駆け引きです」と32歳フッカーの堀江は説明する。「組む前の押す、押さない。そこが僕の中では一番、大切な駆け引きになってきます」

 日本の、サンウルブズのスクラムはひと言でいえば、「8人で固まってまっすぐ押すこと」である。メンバーを固定せずとも、マイスクラムをどうつくりあげるのか。スルメと一緒、スクラムは組めば組むほどうまくなる。

 もうひとつ、課題のラインアウトを見てみると、この日は15本中12本、成功した。成功率は80%。これまでの通算成功率がリーグ最下位の76・8%だった。本職のロックが戻ってきたとはいえ、強風が吹き荒れていたことを考えれば、ラインアウトの強いワラタス相手によくやったのではないか。

 これもリズム。スローワーの堀江は「もっと速いテンポで入れたかった」と言った。こちらもメンバーが固定していないので、短い期間の打ち合わせ、練習でタイミングを合わせなければいけない。

「そのぶん、はよ、セットして、はよ、やりたかった。まだ、2、3テンポ、遅い」

 チームとしての成長が試合では見えてこないが、メンバーが代わる分、選手全体の経験値としては上がっているだろう。若手にもチャンスが生まれている。23歳の姫野和樹、具智元、25歳の徳永祥尭(よしたか)は確実に成長している。25歳の流大、松島幸太朗も。

 また課題も明確になった。アタックの精度、個々のタックル、ディフェンスのシステム、組織防御、互いの連係である。

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