韓国出身の巨漢プロップ・具智元はラグビー日本代表の秘密兵器となるか (2ページ目)

  • 向風見也●文 text by Mukai Fumiya
  • 井田新輔●写真 photo by Ida Shinsuke

 20歳以下日本代表で具を指導した沢木敬介ヘッドコーチ(現・サントリー監督)は、当時から「具は2019年(のW杯)にプレーしていなきゃいけない選手」と言い続けてきた。2015年まで日本代表のスクラムコーチだったマルク・ダルマゾは、条件さえ整えば彼の母国であるフランスで挑戦させたかったという。いずれにしても、それだけの才能を秘めているということだ。

 具は、2016年に結成されたサンウルブズには、初年度から招集された。日本語を流暢に話し、先輩選手からは「ぐーくん」とかわいがられた。

 しかし、挫折も味わう。当時、サンウルブズのヘッドコーチだったマーク・ハメットにうまくアピールすることができず、専門コーチ不在のスクラム練習では先発組はおろか、控え組にも入れなかった。

 リーグ戦は故障者が続出したこともあり4試合の出場機会を得たが、本職とは違う左プロップだった。同じプロップでも、左右が違えば重圧のかかり方も異なる。両肩で相手と対峙する具にとって、左肩が誰とも触れない左プロップでのプレーは未体験ゾーンに近い。力を発揮できぬまま終わってしまった。

 そして今季も試練は続いた。

「ジウォン、下がるな!」

 今年からサンウルブズのスクラムコーチになった長谷川慎は、8人の姿勢や手足の位置を明確化し、日本人にマッチした低いスクラムを目指していた。

 緻密なシステムを確立するためには、組み合う瞬間に足を後ろに引いてしまう具の癖は見逃せなかった。穏やかな性格が影響しているのかと感じ、とにかく「下がるな!」と繰り返した。

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