36歳で緊急フル出場。トンプソン ルークの代表引退はもったいない (4ページ目)

  • 斉藤健仁●取材・文・撮影 text & photo by Saito Kenji

 そんなトンプソンにとって、アイルランド代表との2戦目は2015年ワールドカップ以来、1年8ヵ月ぶりのテストマッチだった。日本代表に合流して1週間足らずだったものの、「4番」を背負っていきなり先発を託される。「彼には経験があるし、チームに自信をもたらしてくれる。フィジカル的な存在感も見せ、ラインアウトのオプションも初日で覚えてくれた」(ジョセフHC)。

 かつては「仲間を鼓舞するために」君が代を大声で歌っていた。しかし今回は、目を閉じて噛みしめるように歌っていた。その姿に胸を打たれる。

「日本代表に来たら、ベストを尽くすのは当然。僕の仕事をするだけ」

 言葉どおりにトンプソンは前半2分、いきなりビッグタックルを披露して相手のボールをターンオーバーする機会を作る。ラインアウトでも長身を活かして起点となり、スクラムも懸命に押し続けた。36歳のチーム最年長ながら、なんと80分間のフル出場。日本代表のプライドとはどういうものなのか、若い選手に身をもって教えるかのような愚直なプレーぶりだった。

 タックル数は両チーム合わせても断然トップの24回。文字どおり、もっとも身体を張った選手だった。試合後、「両肩が痛いね」というトンプソンの表情は、試合には負けたものの晴れやかだった。

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