フランスの仲間やファンに愛された五郎丸。この挑戦が役立つ時がくる (6ページ目)

  • 小川由紀子●文 text by Ogawa Yukiko
  • photo by Aflo



 ただ、五郎丸はひょっとしたら、最初から1年だけ、この世界最高レベルのリーグで研鑽したい、というつもりだったのかもしれないとも思う。

 初めて出場したリヨン戦のあと、こう語っていた。

「コンタクトスキルの部分において、フランスリーグは世界有数のレベルにあると思うので、それをしっかり肌で感じて日本に帰りたいと思います」

 いま、挑戦の幕が開いたところで「日本に帰る」という発言が出てきたことに驚いたが、この言葉はその後も何度か繰り返された。「このリーグでできる限り挑戦してみたい」というよりは、「学べるものを学んで日本に持ち帰ろう」という考えだったのかもしれない。

 いずれにしても、五郎丸自身には、自分の今後のラグビー人生がしっかりと見えているのだろう。日本代表復帰を目指すにしてもそうでなくても、自分ができる一番いい形で、日本のラグビーの発展に貢献していこうと考えているのは確かで、そのときにここトゥーロンでの経験は必ず役に立つ。

*     *     *

 五郎丸はファンには、いつもとびきりの笑顔で応じていた。サインや写真に丁寧に応じる姿はジェントルマンなラガーマンそのもの。サインを待つ孫におじいちゃんファンが「この選手はね、日本の一番すごい選手なんだよ」と教えていたのを聞いたときには、こちらまで誇らしい気持ちになった。

 それに世界トップクラスのチームメイトたちとトレーニングに汗を流す姿は、とても充実しているように見えた。全体練習のあとは、いつもハーフペニーとキックの練習に励み、誰よりも遅くまでグラウンドに残っていた。

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