フランスの仲間やファンに愛された五郎丸。この挑戦が役立つ時がくる (5ページ目)

  • 小川由紀子●文 text by Ogawa Yukiko
  • photo by Aflo



 もっとも気になったのは、シーズン当初にフォードHCがしきりに指摘していた点だ。

「ゴロウマルはインテンシティが足りない。もっとインテンシティを見せてほしい」

 "インテンシティ"はスポーツ界で非常によく使われる言葉だが、日本語でぴったりくる言葉がなかなかない。ガッツを見せる、とか、強気で取り組む、とか、熱心さ、そんなことをひっくるめたような言葉だ。

 体の中ではファイティングスピリッツが煮えたぎっていても、表面でクールに見える選手は、感情をむき出しにする西欧、とくにラテン系の国では損をしがちだ。五郎丸以外でも、海外挑戦した日本人選手について同じような評価を耳にしたことが何度かある。

 そこにはカルチャーの違いもある。日本人は指揮官の言葉に誠実に従う姿勢が正しい、という傾向にあるが、こちらでは歯向かってでもアピールするのがやる気の表れと好意的に受け取られることも多い。

 前述のグルノーブル戦のあとでマッサボ記者は首をかしげていた。

「ゴロウマルは、監督に『もしベルナールの調子が悪ければ、自分に蹴らせてください』といったアピールはしたんだろうか? フランス人の選手なら確実にそうするだろうし、試合中でもベルナールの調子が悪いと思えば、『おい、調子悪かったら言えよ、俺が代わるから』と言って自発的に蹴りにいったりするものだが......」

 単に熱心にトレーニングに励むだけでは、ここではチャンスはつかめないということなのだろう。どんな場面でどんな態度をとるか、相手とどんなやりとりをするか、といった処世術も重要なのだ。

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