五郎丸歩の活躍を難しくした
RCトゥーロンの複雑なチーム事情

  • 小川由紀子●文・写真 text & photo by Ogawa Yukiko

「ハーフペニーよりは下、ミッチェル、オコナーとは同等レベルだが、ゴロウマルのフルバックとしての才覚がベルナールより下だということはありえない」

 この頃、チームのほうも深刻な状況に陥っていた。

 その第17節のラ・ロシェル戦は終了間際にPKを決められ20-23とホームで勝利を逃し、第19節のブリブ戦ではアウェーとはいえ格下に15-5と封じられ、プレーオフで有利なホームアドバンテージを得られる3、4位のポジションが危うくなり、フォードHCには会長から猛烈なプレッシャーがかけられていた。

 サポーターや会長を怒らせていたのは、「敗戦」という試合結果だけでなく、覇気や才気を感じられない選手たちの戦いぶりだったが、このとき実際、チーム内はバラバラの状態だった。

 トゥーロンにはもともと、フランス人選手とアングロ・サクソン系選手の派閥がある。試合に勝ち続け、調子がいい時には互いに仲がよい。

 しかしひとたび不振に陥ると、お互いに責任をなすりつけあう。

 フォードがヘッドコーチに任命されたとき、地元記者が「ゴロウマルは英語ができるのか? でなければメンバー入りは厳しい。フォードは英語ができる選手しか使わないから」と言っていた。よくあるフランス人の皮肉だろうと思っていたら、そうではなかった。

 フォードHCはトゥーロンで、自らがイングランドのラグビー界で培ってきたメソッドを注入しよう奮闘した。一般的にイングランドのラグビーは、フランスよりもより組織だっていて規律にも厳しい。

 欧州チャンピオンズカップの対サラセン戦を取材した英サンデー・タイムズのラグビー担当スティーブ・ジョーンズは嘆いていた。

3 / 6

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る