大学ラグビー8連覇を狙う帝京大、
迎える早稲田戦に死角はあるか

  • 松瀬 学●文 text by Matsuse Manabu  井田新輔●写真 photo by Ida Shinsuke


 主将のフランカー亀井亮依(りょうい)は、「挑戦」をこう説明した。

「勝負は日ごろの一日、一日に自分自身で戦えるかどうかです。一番の敵は自分だと思っています。社会人にも勝とうとしているので、練習で、社会人を意識したプレーの強度であったり、集中力であったり、そういったものを、全員がどう高めていくかですね」

 なるほど、学生たちの志は高い。この日の慶大戦から見えた課題をあえて挙げれば、スクラムとゲームの立ち上がりである。接点で受けたときのディフェンスである。結束とメンタルである。個人の能力、総合力ではやはり、大学では群を抜いている。

 そういえば、帝京大は毎試合、岩出監督が「試合MVP 」を発表している。チームメイトからの信頼の証ゆえ、そのMVP への部員のモチベーションは高い。

 慶大戦の後、ラグビー場の外の暗闇で全部員による円陣が組まれた。輪がぎゅっと小さくなる。岩出監督がユーモラスに言った。

「MVP 、今回はナシ!」

 なぜか学生の笑いが起こった。次の試合には慶大戦を反省して、全員でMVPを狙っていけ、との監督のメッセージだったのだろう。ポジティブ・スイッチが入った。

 次戦は11月6日の早大戦(秩父宮)である。今季は好調といわれている伝統校。スタンドの観客数も増えるだろう。どうしたって、やる気が沸き出てくる。

 こちらを早大OBと知ってだろう、雑談の際、岩出監督が愉快そうに話しかけてきた。

「大悟(早大・山下監督)がね、一生懸命やっているんでしょ。ワセダも期待しているし、マスコミさんも期待している感じがするものね。そこらじゅう、ワセダ、ワセダ、ワセダって。帝京は帝京の全力を出します」

 まずい。王者の闘志に火がついた。

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