我々に託された平尾誠二の遺志。「2019」は成功させなければならない (3ページ目)

  • 宮崎俊哉●取材・文 text by Miyazaki Toshiya
  • photo by AFLO

 日本ラグビー史に残るかもしれない、貴重な瞬間に立ち会った私は興奮した。

 代表監督となった平尾は、選び抜いた選手たちのフィットネスを最大限まで高め、ディフェンスを徹底的に強化。ゲーム練習のなかでは、選手ひとりひとりに創造性豊かな判断力を磨かせた。

「ようやくチームらしくなってきた、ということですかね。チームのスピリットや学習能力がついて、自分たちで目標を設定したり、問題を消化できるようになった。言い換えれば、ひとつの高度な生命体として機能できるようになった、ということでしょうか。ゲームでも、たとえ誰かがミスしても、それをチーム全体がリカバリーできるから、致命傷にならない。そして、状況に応じて『リズム』を変え、チャンスとなればどんどん『テンポ』を上げて、高速ラグビーで勝負する。

 正直、いくら強くなったと言っても、世界の強豪が一堂に会するワールドカップは実際に試合をしてみないとわからない。だが、我々が取り組んできたプロジェクトはしっかりと機能し、自分たちなりに考えてきた強化はできたはず。やるだけのことはやった。あとは『結果を見てください』という心境です」

 平尾ジャパン、3年目の挑戦――。失った誇りを取り戻した日本代表は、意気揚々と1999年ワールドカップの開催地・ウェールズに乗り込んだ。ところが、結果は3戦全敗。ワールドカップがスタートして4回目の大会、各国の強化は日本の予想をはるかに超えて進んでいた。

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