【ラグビー】38歳、謙虚な鉄人。大野均は灰になっても走り続ける

  • 松瀬 学●文 text by Matsuse Manabu  齋藤龍太郎●写真 photo by Saito Ryutaro

 昨年のワールドカップ(W杯)では南アフリカを倒し、人前で大泣きした。キャップ(国別対抗戦出場数)が日本人フォワード最多の「96」。もうレジェンドだ。大野のいいところを聞くと、臨時コーチの元日本代表主将の箕内拓郎さんは「キンちゃんは変わっていないんです」と言った。

「僕に言わせると、代表に入ってきたときのキンちゃんと、いまのキンちゃん、一緒なんです。グラウンド内外で黙々とやっています。今回一緒になっても、やっぱり謙虚なキンちゃんなんです」

 そうなのだ。大野は謙虚で誠実、いつもひたむきにラグビーに立ち向かっているのである。モットーが『灰になっても、まだ走る』。若さを保つ秘訣は?と聞かれると、大野はまた、照れ笑いを浮かべた。

「若さを保っているつもりもないですけど……。ありがたいことに、東芝でもジャパンでもサンウルブズでも、コンスタントに高いレベルでラグビーができているのが大きいのかなと思います。休まなくて大丈夫か?と聞かれるけど、自分としては、休まないほうが体調はいいのかなと思っています」

 いつだって自然体。雑草のラガーマンは、いつも全力投球でラグビーに向かい、とうとう「レジェンド」の境地に達した。

 実家は郡山市の農家。牛小屋のワラ運びや牛乳配達を手伝い、牛乳をたらふく飲んで育った。なぜタフなのか、と聞かれると、大野は笑って、こう答えた。

「やっていることが単純だからじゃないですか。パスもキックも下手なんで……」

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