【ラグビー】後がなかったサンウルブズ、2019年につながる歴史的1勝 (4ページ目)

  • 松瀬 学●文 text by Matsuse Manabu  齋藤龍太郎●写真 photo by Saito Ryutaro

 右プロップの垣永真之介は25日にも最愛の女性と入籍する。試合後は競技場に早足で出て行って、その女性とハイタッチで喜びを分かち合った。垣永も幸せそうな笑顔を浮かべる。

「二重の喜び? いえいえ。でも、もちろん、うれしいです」

 サンウルブズはハードな日程の中、負け続けながらも、たくましくなってきた。「慣れ」、「積み重ね」である。フィジカル、フィットネス、そしてチーム内のコミュニケーション。この日の先発メンバーには海外出身者が8人並んだが、長期の遠征などを通じて、互いの意思疎通がとれてきた。つまり「ワンチーム」になってきた。

 試合後のロッカールーム。マーク・ハメットヘッドコーチ(HC)は缶ビールを一気に飲み干した。選手たちも、缶ビールを空け、歴史的勝利を祝った。

 ハメットHCはコーチボックスでは、めずらしく涙ぐんでいた。

「常にポジティブにやっている。できなかったことにフォーカスするのではなく、何ができるのか、その可能性をもっと高めていきたい。ハードワークをして、常に100%を試合に出す。チーム一丸となって進んでいくことが大事です」

 これで壁をひとつ、ぶち破った。ファンの胸をゆさぶった。離れかけたファンを再び、スタジアムに呼び込むことになるだろう。

 だが強豪相手の試合はつづく。新たな壁がつづく。サンウルブズはひと呼吸つき、GWには豪州のフォースを秩父宮に迎える。さらに個々のプレー、連係プレーの精度を高め、スクラム、ラインアウトを強固にしていかないとこのリーグを生き抜けない。
勝利は大事だが、なんといっても2019年W杯に向けた若手の成長こそ、ポイントにおいてほしい。サンウルブズ参戦の趣旨は「日本代表の礎(いしずえ)造り」にある。若きオオカミたちに、もっと試練と成長を。

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