【7人制ラグビー】京大卒・竹内亜弥、リオに向かってひたむきに走る

  • 松瀬 学●文 text by Matsuse Manabu  長尾亜紀●写真 photo by Nagao Aki

 3位決定戦の香港戦では、再三、強烈なタックルを見舞わせた。ひたむきだった。1本のタックル、1本のパスに魂を込めた。その集中力と貴い気概。つい好感を抱く。

 日本選抜の稲田仁ヘッドコーチは「いいパフォーマンスだった」と褒め、「自分が今までやっていたプレーと、世界レベルのプレーの間で悩んでいたんでしょう。プラスアルファで何を作らないといけないか。それがわかったと思います」と言う。

 五輪の舞台は夢である。バレーボールだったら、「全然です。ほんと全然ダメでした」と笑う。だが、ラグビーに転向して、夢実現の好機が生まれた。サクラセブンズが五輪出場を決めると、経歴のめずらしさもあってか、取材がどっと増えた。

「戸惑いがあったけれど、これがオリンピックかなと思って楽しんでいます」

 167cm、68kg。体重を増やすため、3時のおやつをおせんべいからおにぎりに変えた。大事にしてきた言葉が、ユーモラスで『ゴハンお代わり無料』である。

「体重を増やすため、食事はいっぱい食べた後、もう一杯食べるかどうかで、メダルの色が変わると思いながら、いつも無理に食べてきました」

 一昨年の6月から、勤務先の新潮社を休職し、熊谷に引っ越した。すべてを楕円球にかける。ラグビー一色の乙女の『青春』である。

「日本の目標として、オリンピックで金メダルが揺るぎなくあって、それに向かっています。自分がそれに値しないなら外れた方がいい。いや、値するプレーヤーになりたい」

 さて“シンデレラ・ストーリー”の結末はいかに。香港で初心に戻った29歳。社会人からラグビーを始めた「頑張り屋」がリオ五輪へ走る。ひたむきに。

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