日本ラグビーの未来を担うサンウルブズ。どこまで世界と戦えるか (2ページ目)

  • 松瀬学●文 text by Matsuse Manabu  志賀由佳●写真 photo by Shiga Yuka

 冷たい雨が降る豊田スタジアムには、2、3分の入りとはいえ、熱心な約1万人のファンが駆けつけていた。そのスタンドが沸いたのが、後半13分の山田のトライだった。相手にチャージされ、自陣のインゴールにこぼれたボールをバックスが拾って一気に逆襲、フォワード(FW)、バックス一体となって10人余りがつなぎにつなぎ、最後は山田がクルリと体を回してタックラーをはじき、右隅にダイビングトライをした。

「僕は走っただけですよ」と、山田は謙遜してみせた。「相手が(タックルに)きてそうだったので、クルッと回って。ははは。よかったですね」

 このレベルのチームになると、何より実戦が最高のチーム練習となる。収穫はディフェンスラインで、外からしっかりと出られたことと山田は振り返った。

「課題は、まだみんなの特徴を把握しきれていないことですかね。練習とか、試合とかを重ねながら、みんなの特徴を見ていきたい」

 この日は、アタックもディフェンスもやろうとすることはシンプルだった。ボールを持った選手はコンタクトエリアで前に出る。ブレイクダウン(タックル後のボール争奪戦)ではファイトする。ボールを早く動かす。リロード(素早く立ち上がり、次のプレーに移ること)を意識する......。アタックのポイントは相手にターゲットを絞らせないこと。FW、バックス一体となって、複数による波状攻撃を仕掛け、しつこく攻めていくことである。

 前半はチームのタテのライン、すなわち、2番のフッカー堀江翔太、8番のナンバー8、エドワード・カーク、9番のスクラムハーフ、日和佐篤、10番のスタンドオフ、トゥシ・ピシらの動きが効いていた。特にコンディションのいいピシは自在な個人技を再三披露してスタンドを沸かし、MVPを獲得した。

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