【ラグビー】パナソニック決勝へ。堀江翔太が語る「3連覇への手応え」 (2ページ目)

  • 松瀬学●文 text by Matsuse Manabu  齋藤龍太郎●写真 photo by Saito Ryutaro

 1分後。またも自陣ゴール前左の神鋼ボールのラインアウト。こんどはロック(LO)谷田部洸太郎が前で跳んで、ボールを奪取した。窮地を脱す。さらに1分後の自陣左のラインアウトも西原が邪魔をした。パナソニックのロビー・ディーンズ監督は言った。

「ゲーム序盤に彼らの強みであるラインアウトモールをしっかりと阻止できたのがよかったと思います」

 自陣からやっと抜け出したら、スクラムでコラプシング(故意に崩す行為)をもらい、難しい位置からの約40mのペナルティーゴール(PG)をスタンドオフ(SO)のヘイデン・パーカーが蹴り込んで、3点を先取した。スクラムでも、堀江が長崎を揺さぶり、相手スクラムの要のプロップ山下裕史の押しを半減させた。

 巧いというか、狡猾というか。コンタクトエリアでは、パナソニックの選手の無駄のない動きが光った。ブレイクダウン(タックル後のボール争奪戦)でもディフェンスでも、個々の反応とスピードがはやいから、パナソニックは数的優位に立てるのだった。

 堀江が説明する。

「コンタクトエリアのひとつひとつをしっかり判断していくというのを意識しました。ディフェンスは判断とコミュニケーションです。うちには、もともと三洋(三洋電機=現パナソニック)の時にできたディフェンスの文化が残っていますから」

 文化とは、タックルの強さは当然として、コミュニケーションの取り方、声の掛け方、互いの間隔の保ち方、立ち上がりのはやさなどを指す。ディフェンスへのこだわり、意思統一、プライドでもある。いまの王者にはディシプリン(規律)が加わった。

 この日の反則数は相手13に対し、パナソニックは4だった。勝利の立役者は1人で27点を挙げた25歳のパーカーだったが、それを引き寄せたのは15人のラグビー理解度の高さと粘り強いディフェンス、攻守の切り替えのはやさにあった。その象徴が世界レベルの29歳、堀江である。

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