【ラグビー】美しき勇者「サクラセブンズ」、リオのメダルが見えた (4ページ目)

  • 松瀬 学●文 text by Matsuse Manabu  齋藤龍太郎●写真 photo by Saito Ryutaro

 一貫していたのは、走り込みの質量である。例えば、恐怖の千葉・勝浦合宿。朝5時に起きて海岸まで2km走って、砂浜でひたすらタックル練習に励む。帰り道は上り坂ダッシュ。砂と汗だらけの顔の代表選手たちは、地元の人から畏怖の目で見られていた。
 
 代表選手は多くのものを犠牲にして、猛練習に励んできた。兼松は8歳の愛娘とほとんど離れ離れの生活となった。試合後、スタンド前に並んだ時、兼松は、ダッシュで駆け寄ってきた愛娘を、黒色のベンチコートで包むようにして抱きしめた。涙声で漏らす。顔はファイターから、優しい母のそれに変わっていた。

「寒かったこともありますが、とにかく、(娘に)触りたかったんです。やっと抱きしめられたなって。あとで金(優勝)メダルを(娘に)かけてやりました」
 
 アジアで勝ったサクラセブンズだが、ニュージーランドやカナダ、豪州などの世界トップクラスとの差は、まだまだ大きい。でも、男女15人制、男女7人制の中で、もっとも世界トップとの距離が短いのは間違いなく、サクラセブンズである。
 
 まずはもう一度、個人のフィジカル、フィットネス、技術から鍛え直さないといけない。アタックで抜く力、ディフェンスで倒し切る力、そしてパススキルも。休む間もなく、ワールドシリーズの転戦が始まる。
 
 中村主将は宣言した。

「このチームの目標は(リオ五輪の)金メダルです。ここがスタートラインと思ってやっていきます」
 
 この4年間の伸び率を考えると、あながち夢物語ではあるまい。あと9カ月。今度はリオ五輪に向けて走る。ひたむきに。

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