【ラグビーW杯】日本、歴史的な2勝目。「勝因は規律とハードワーク」 (3ページ目)

  • 松瀬 学●文 text by Matsuse Manabu  齋藤龍太郎●写真 photo by Saito Ryutaro

 このプレッシャーが相手のミスを誘い、日本の攻守にリズムを作った。さらに地味ながらも、ナンバー8のホラニ龍コリニアシやウイング松島幸太朗の猛タックル、スタンドオフ小野晃征のセービングはいぶし銀の輝きを放った。かつて挑戦したアメリカンフットボール仕込みのアクロバティックなダイビングトライを見せた山田章仁も、タックルでも体を張っていた。キックも忠実にチェイスした。それこそが成長の証である。

 過去3勝11敗と大きく負け越していたサモアに21点差で勝ったことは、ジョーンズHCの構築した戦略、相手の分析はもちろんだが、一番は選手のフィジカル面の成長である。外国出身選手の存在も大きいけれど、4年間の鍛錬の賜物だろう。

 この大会で飛躍したフルバック五郎丸歩は4ペナルティーゴール、2ゴールの16点を蹴り込み、今大会通算45点とし、W杯日本歴代最多得点記録をマークするとともに、今大会の得点王争いではトップに立った。

 南ア戦後と違い、この日の五郎丸は喜びも控えめだった。「歴史が一つ一つ変わっていくことはチームに非常にプラスになりますし、個人的にもうれしいですね」と漏らし、この勝利の価値を口にした。

「まずは南ア戦で国民の期待を少しこちらに向けることができて、スコットランド戦では不甲斐ない形で終わってしまいました。でも、この勝利で我々の力というものをしっかり国民の皆様にアピールできたのではないかと思います」

 次の米国戦に勝っても、日本の決勝トーナメント進出は難しい状況である。他チームの結果も気になるところだが、五郎丸はこう言い切った。

「何回も言いますけど、僕は先を見てないですよ。次も勝ちにいくだけです」

 次の米国戦は11日(グロスター)。気持ちの切り替えとリカバリーがポイントとなる。歴史を作った日本の選手たちにとっては、おそらく人事を尽くして天命を待つ、の心境なのだろう。

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