【ラグビーW杯】スコットランド戦。感謝を胸に五郎丸歩が走る (2ページ目)

  • 松瀬学●文 text by Matsuse Manabu
  • 齋藤龍太郎●写真 photo by Saito Ryutaro

 この五郎丸のプレーの安定感はどうだろう。約3万人の大観衆の視線を一身に浴び、5ペナルティーゴール(PG)、2ゴールを蹴りこんだ。ゴールを狙う際はまず、ボールを2回まわして、少し前に倒して立てる。後ろに3歩下がり、横に2歩動き、そこで右手を使って重心移動のイメージを作る。その後、両手を胸の前で合わせて助走に入り、足を振り上げる。「儀式」である。

「(蹴る際は)ずっとルーティンのことに集中しています」。だから、余分に気負うこともなく、自分のリズムを維持できるのだろう。チームメイトの信頼を得て、責任感を感じてプレーできるというのは選手冥利に尽きるのである。
 
 練習はうそをつかない。「世界一の練習」に加えて、ふだんから自主練習を欠かさない。体幹やフィジカルも強化され、蹴る際の体の芯がぶれなくなった。結果、フォーム、ボールの軌道とも安定している。185センチ、99キロ。キックやランとともに、目立たぬがタックルも随分、よくなった。

 福岡市出身。佐賀工業高校、早稲田大学で活躍し、日本代表のキャップ(国代表戦出場)数は「54」を数える。スターとして陽の当たる道を歩んできたが、2009年のヤマハ発動機ラグビー部の規模縮小で、プロ契約から社員契約となり、人間としての幅が広がった。

 いつも周囲への感謝を忘れない。南ア戦の翌日、自身のツイッターに「ラグビーが注目されている今だからこそ、日本代表にいる外国人選手にもスポットを」と訴えて話題をなった。開幕前、このW杯に懸けるものを聞いたら、「感謝」と即答した。

 さあ、試練のスコットランド戦である。

「フィットネスのあるチームは、リカバリーが早いとエディー(・ジョーンズ)さんも言っている。向こうも警戒してくるでしょうし、簡単に勝てるようにはいかない」

 目標はベスト8。そう気を引き締めながら、五郎丸は闘志をかき立てている。

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