【ラグビーW杯】歴史的勝利。日本代表が史上最大のアップセットを起こせた要因 (3ページ目)

  • 松瀬学●文 text by Matsuse Manabu 齋藤龍太郎●写真 photo by Saito Ryutaro

 日本が目指してきた『アタッキング・ラグビー』を象徴するトライだった。五郎丸はこの日、ひとりで24点をマークした。

「(南アに)走り勝てる自信があった」

 これまで日本は強豪とのテストマッチでは、ラスト20分でやられ続けてきた。それがこの日はラスト20分、いやロスタイムで勝ったのである。自信の裏付けは、ズバリ世界一の「ハードワーク」である。

 さらに準備も万全だった。スクラムコーチにダルマゾ氏を招いたほか、ディフェンスコーチ、ストレングス強化のコーチなど、各部署に世界的なコーチを配した。メンタルコーチまでつけ、重圧のかかる大舞台でも実力が発揮できるようにした。

 その結果、スクラムでも押し崩されることはなかった。先発メンバーのFWの平均体重が南アの約117キロに対し、日本は約109キロだった。その差8キロ。押し込まれても、8人の結束は最後まで崩れなかった。

 低い姿勢と結束力、勝利への執着力とプレーの精度。そのベースとして「信は力なり」なのである。己を信じ、チームメイトを信じ、勝利を信じることが、何より大事なことだった。

 奇しくも19日は、日本ラグビーの歴史を創った故・大西鐡之祐(※)さんの20回目の命日だった。その日に新たな歴史が刻まれた。3大会連続W杯出場の37歳ロック、大野均は「感無量です。こんな日が来るとは」と顔をくしゃくしゃにした。
※元ラグビー日本代表監督(1966年~1971年)。日本人の特性に基づいた戦術を練り、世界の強豪と接戦を演じた

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