【ラグビー】W杯まで1ヶ月。キーマン田中史朗の「手応えと課題」 (3ページ目)

  • 松瀬 学●文 text by Matsuse Manabu
  • 齋藤 龍太郎●写真 photo by Saito Ryutaro

「でも」と田中はどこまでも前向きだ。「もうちょっと南アフリカはまっすぐ来てくれるので、戦術的にはラクかなと思う。フィジカル的に強いのなら、1人でダメなら、2人でかかっていけばいいんです」
 
 収穫もあった。ディフェンスである。チームとしてのシステムをベースとし、田中は「ひとりひとりの判断もできている」と自信を深める。単純なタックルミスでトライを許したが、インサイドブレイク(防御の内側を縦に抜かれること)はなかった。そこに成長の跡が見てとれる。
 
 日本は前回のW杯ニュージーランド大会では1分け3敗に終わった。ラグビー人気も下降線をたどる。その屈辱を糧とし、田中や堀江、主将のリーチ マイケル(東芝)らが南半球のスーパーラグビーに挑戦した。

 その結果、ジャパンは強くなった。が、先のパシフィック・ネーションズ杯は1勝3敗で、6チーム中4位に終わった。大会中の練習で、勝利への執着のばらつきに危機感をおぼえた田中はチームメイトにも厳しい檄を飛ばしたそうだ。
 
 それだけ、前回W杯経験者の田中は必死なのである。この4年間のハードワークはすべてW杯イングランド大会のためである。

「しっかりと結果を残さないと大会後にどうなるかは前回W杯でわかっている。結果を出して、日本のラグビー人気を盛り上げていきたいな、と思います」
 
 記者の汗のにおいと熱気が立ち込めるミックスゾーン。田中は額の汗を右手の甲でぬぐい、ささやく調子で続けた。「本当に100%、日本のためにという思いを持っているか。もっともっと継続してレベルアップしていきたい」

 真夏の夜。30歳のキーマンの夢は日本ラグビー人気の復活、そのためのW杯ベスト8進出である。

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