ラグビー日本選手権決勝。ヤマハ、どん底から日本一への道程 (4ページ目)

  • 松瀬 学●文 text by Matsuse Manabu
  • 齋藤龍太郎 ●写真 photo by Saito Ryutaro

 五郎丸は述懐する。「ぼくがヤマハに入ったのは、これから強くなるチームだと思ったからです。だけど、道半ばでの規模縮小で……。でも清宮さんが来て、1年1年、ステップアップしてきた。ファンやいろいろな人に支えられて、ここまできたんです。早大時代の3度の優勝とは違いますね」

 サントリーを辞めた清宮監督がヤマハを指導し始めてから、上昇気流に乗った。TL8位から6位、5位、そして、今季はTLプレーオフ決勝に進み、パナソニックに敗れた(※)。
(※)TLプレーオフトーナメント決勝12-30で、パナソニックに破れ、準優勝。その後に行なわれる日本選手権はTL上位4チーム、大学選手権上位4チーム、TLワイルドーカードトーナメントで勝ちあがった2チーム、計10チームで争われる。

 その敗戦でさらに成長した。選手は自主的にミーティングを繰り返し、負けたのは自滅から、自分たちのラグビーをやれば勝てるとの確信を得た。これもヤマハスタイル。

 苦労した分、努力した分、チームは成長するものである。人生と一緒。清宮監督は「必然の勝利」と言い切った。

 「やっぱり、自分たちがイメージできたことを、グラウンドでできるようになったことが素晴らしい。うちには確固とした戦略もある。こうなったらこうなる、だからこうするということにこだわっています」

 いわば柔道の型みたいなものだろう。足技で崩して、投げ技で一本を取る。腰を落として、相手の投げ技を踏ん張る……。流れだ。スクラム、ラインアウトという武器を生かす戦略をたて、“一本”をもぎ取るのである。

 47歳の清宮監督自身も変化し、コーチ陣に責任を分担させるようになった。チームスタッフも年々整備され、食生活からケア、トレーニングも改善されてきた。そして何より、選手たちの意識が変わった。4年間、ハードワークに取り組んできた。そこに雑草軍団の選手とチームの成長が見てとれる。

 これは全員で勝ち取った「必然の日本一」だったのである。

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