【ラグビー】古豪復活へ。神戸製鋼の新指揮官が授けたもの (2ページ目)

  • 向風見也●文 text by Mukai Fumiya
  • photo by Kyodo News

 もっとも、これは決して目新しいことではない。むしろ、基本ともいえるプレイを徹底させるところに、このボスの凄みがある。日本代表27キャップのロック・伊藤鐘史は「落とし込みが上手。やることが明確」と証言している。

 フランカーを務める橋本大輝も続く。

「よく『ハードワーク、プレイハード』と言っています。常に100%の力でプレイしろ、と。それに、予定より練習が長くなることもよくあります」

 もちろん、わざとプレッシャーをかけたり、予定よりも長く練習したりするには、ちゃんとした意図がある。ゴールドHCは「試合中、本当に厳しいシチュエーションになっても、普段通りプレイできるようにするため」と話す。

「まず、ディフェンスの練習の量を増やして、全体の強度を上げました。ただ、練習の目的が練習になってはいけない。あまりやり直しをさせないものもあれば、あえてプレッシャーをかけて追い込むなどのことは、練習の目的によって変えています」(伊藤)

 今シーズン、トップリーグのファーストステージを前年度の偶数順位の8チームで構成されるプールBで戦うことになった神戸製鋼は、開幕のリコー戦でノーサイド2分前に逆転のペナルティ・ゴールを決めて勝利。勢いに乗った。

 そしてファーストステージのハイライトは、9月19日のサントリー戦だ。2011年度、2012年度とトップリーグを連覇した強豪相手に接戦に持ち込んだ。フォワード陣によるセットプレイで優位に立ち、守備でも規律を守ったのだ。。そして22-17と5点リードで迎えた後半30分過ぎから、サントリーの連続攻撃を浴びたが、最後まで守備陣が崩壊することはなかった。結局、試合は29-22で神戸製鋼が勝利。サントリー戦での白星は、実に2005年以来のことだった。試合後、伊藤は次のように語った。

「シンプルです。前に出ていくことです。それを80分、続けられました」

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