【ラグビー】金星逃すも、エディーJが4合目から見る風景

  • 松瀬学●文 text by Matsuse Manabu
  • 高見博樹●写真 photo by Takami Hiroki

 肌寒い8日の秩父宮ラグビー場。曇天の下、日本代表(JAPAN XV)はマオリ・オールブラックスに18-20で惜敗した。世界ランキング11位の日本にとって、「世界ランク6~7位の力」(エディー・ジョーンズヘッドコーチ)のマオリは格上だった。いわば金星を逃した。なぜ、だろう。よくみれば、集中力が薄れていたのか、日本にミスが相次いでいたのである。
 
 逆転されたトライの伏線となるのは、相手にボールを渡す前のラインアウトだった。日本ボール。途中で代わったフッカー湯原祐希がノットストレートを犯した。痛恨のミスだった。相手ボールのスクラムに変わった。
 
 マオリはもう、大外勝負しかない。なのに、バックスに回された際、ディフェンスラインの上がりが遅れた。途中交代のBK立川理道(たてかわ・はるみち)のタックルミス。マオリのウイングに走られ、小さなキックを蹴られた。

 戻ったウイング山田章仁がセービングで防ぐ。サイドラインの外に出された。結果論ながら、ここは山田がボールをタッチへ蹴りだしたほうがよかった。直後、冒頭のシーンになる。ディフェンスの綻(ほころ)びは、FWの逆サイドへの戻りが遅れたからだった。
 
 フルバック五郎丸歩は悔しさで顔をゆがめる。後半32分に一時、勝ち越しとなるPGを蹴り込んでいた。ムードは日本の勝ちゲームだった。28歳の副将はこう、言った。

「最後、僕ら(の集中力)が完全に切れていたと思う。もっとコミュニケーションをとっていれば...。正直、勉強させてもらった感じです」

 第1戦(11月1日・神戸)の21-61と比べれば、日本は成長の跡をみせた。なんといっても、「修正能力」を見せた。単調な攻めから一転、密集サイドのタテ突破やシェープ(連動した陣形)を工夫し、アングルチェンジ、ダミーとなる「おとり」で相手を混乱させた。ぶ厚く、多彩に。キックも使った。
 
 ブレイクダウン(タックル後のボール争奪戦)では、よくファイトした。2人目のサポートが早くなり、攻めに日本らしいテンポが生まれた。ただマオリと比べると、人数をかけ過ぎた感はあった。どうしても運動量が増え、最後に足が止まる要因となった。
 
 相変わらず、スクラムでは優位に立った。相手が体重を乗せてきても、より強固な固まりをつくって対抗した。マイボールも押して、後半は4本中3本で相手のコラプシング(故意にスクラムを崩す行為)の反則を奪った。序盤、まっすぐに押し崩して、認定トライももぎとった。

「常に一緒にプレーしたい8人になれ!」がFWの合言葉だった。代表戦初先発の24歳、左プロップ稲垣啓太は「相手が組み方を変えてきても、8人で焦らずに対応できた。自分の仕事はできた」と満足顔だ。右プロップの畠山健介は「しっかりプレッシャーを与えることができた。"ジャパン・ウェイ"はテンポが大事。エディーさんが前の試合から寝ないで戦術を練ってくれたので、うまくボールを動かすことができた」と笑わせた。

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